おでこのシワが急に増えてきたのなら、眼瞼下垂(がんけんかすい)の可能性が考えられます。それでは、なぜ眼瞼下垂になるとおでこのシワが増えるのでしょうか。若いのにおでこのシワが増えてしまい、お悩みのかたもいらっしゃいますよね。
本記事では、眼瞼下垂とおでこのシワの関係について紹介します。悩みを解消するためのヒントとして、ぜひ内容をご確認ください。
なぜ眼瞼下垂でおでこのシワができるの?

眼瞼下垂でおでこのシワができるのは、まぶたが開かなくなると無意識のうちに眉毛を上げて見えやすくしているためです。
前頭筋と呼ばれるおでこの筋肉に力が入り、おでこにシワが寄ります。
ただし、おでこのシワができる理由は、眼瞼下垂だけではありません。
加齢による皮膚のたるみや、一重まぶたによる表情のクセなどが原因でシワが寄る場合もあるでしょう。
原因を知るためには、眼科を受診して調べてもらう必要があります。
眼瞼下垂とは?

眼瞼下垂とは、まぶたが下がって見えにくくなってしまう病気のことです。
眼瞼下垂になると、黒目の中央にある瞳孔が上まぶたに隠れてしまい、視野が狭くなってしまいます。
「まぶたが重い」「見えにくい」と感じるなら、眼瞼下垂が原因かもしれません。
おでこのシワも、眼瞼下垂でよく見られる症状のひとつです。
ステージ別の症状や原因を紹介します。
ステージ別の眼瞼下垂の症状
眼瞼下垂のステージは初期・中期・後期の3つです。
放置していると、眼瞼下垂の症状は次のように進行していきます。
- 初期:自覚症状はないものの、徐々にまぶたが下がり始める。目をパッチリ開けようとすると眉毛が若干上がる。
- 中期:視野が狭くなる。まぶたが重く開けづらくなる。おでこのシワが寄り、眉毛が上がる。
- 後期:黒目が半分以上まぶたで隠れる。中期よりさらにおでこのシワが寄り、眉毛が上がる。頭痛や肩凝りなどの症状が出る。
まぶたが下がって二重の幅が広がり始めるものの、初期の眼瞼下垂にはほとんど自覚症状がありません。
時間が経って中期になると、視野が狭くなる・まぶたが重くなるといった症状が出始めます。
おでこのシワが寄り始めるのも中期です。
後期になると、中期よりもおでこにシワが寄って、頭痛や肩凝りなどの症状も出るようになります。
頭痛や肩凝りの症状が出るのは、おでこの筋肉である前頭筋にかかる負担が大きいためです。
眼瞼下垂の種類ごとの原因
眼瞼下垂の種類は、大きくわけると次の3つです。
- 先天性眼瞼下垂
- 後天性眼瞼下垂
- 偽眼瞼下垂
種類ごとの原因を紹介します。
先天性眼瞼下垂
「先天性眼瞼下垂」とは生まれつきの眼瞼下垂です。
くわしいメカニズムは明らかになっていませんが、原因には次の2つが考えられます。
- 筋肉(眼瞼挙筋)の弱さ
- 神経の不具合
まぶたを上げる筋肉が「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」です。
眼瞼挙筋が弱かったり、まぶたをあげる筋肉に関係する神経に不具合が出ていたりすると、生まれつきの眼瞼下垂につながると考えられています。
後天性眼瞼下垂
「後天性眼瞼下垂」のうち、約9割は加齢が原因です。
年齢を重ねると、誰でも眼瞼下垂になる可能性があります。
加齢以外で考えられるのが、次のような原因です。
- 外傷や目の手術
- 病気(脳梗塞や脳動脈瘤など)
- ハードコンタクトレンズ・つけまつ毛・二重のりなどの使用
外傷・目の手術などが原因で起こる眼瞼下垂は、腫れが落ち着くと症状が改善する場合があります。
脳梗塞・脳動脈瘤といった病気も、眼瞼下垂を引き起こす原因のひとつです。
急に片目だけ眼瞼下垂になった場合は病気の可能性も考えられますので、早急に病院で相談しましょう。
ハードコンタクトレンズやつけまつ毛などの使用でまぶたに負担がかかり、眼瞼下垂を引き起こすこともあります。
ハードコンタクトレンズやつけまつ毛そのものが悪いわけではないものの、使用頻度には注意が必要です。
毎日使っているようなら、使用頻度を減らしてみましょう。
偽眼瞼下垂
眼瞼下垂のようにまぶたが開かなくなるものの、筋肉や腱には問題ない状態が「偽眼瞼下垂」です。
偽眼瞼下垂には次のような原因があります。
- 加齢
- 眼瞼けいれん
- 眼球陥凹
原因が違うため、眼瞼下垂と偽眼瞼下垂では治療方法が違ってきます。
眼瞼下垂によるおでこのシワを消す方法

眼瞼下垂が原因でできたおでこのシワを消す方法は、以下の2つです。
- 眼瞼下垂の手術を受ける
- 眼瞼下垂の手術後にシワの治療を受ける
おでこのシワが出始めてからそれほど時間が経っていないのなら、眼瞼下垂の手術で改善できる可能性が高いでしょう。
年月が経過すると、眼瞼下垂の手術を受けてもシワが刻まれた状態になってしまいます。
その場合は、シワそのものに対する治療も必要です。
2つの方法について、それぞれ概要を見てみましょう。
眼瞼下垂の手術を受ける
眼瞼下垂でおでこのシワが寄っている状態なら、手術による治療を検討してみましょう。
手術には種類があり、もっとも一般的な方法が「挙筋前転法」です。
挙筋前転法では、まぶたの皮膚を切開して挙筋腱膜を瞼板から引き出し、前転させて固定します。
手術を受けるとおでこのシワが減って、眉毛を上げなくても見やすくなるでしょう。
挙筋前転法は、術後の腫れが少なく、再発しにくい方法です。
ただし、重度の眼瞼下垂では、ほかの手術が適している場合もあります。
眼瞼下垂の手術後にシワの治療を受ける
時間をかけて刻まれたおでこのシワは、眼瞼下垂の手術を受けても消えない場合があります。
手術を受けてもシワが消えないようであれば、シワそのものに対する治療も検討してみましょう。
おでこのシワ治療で広く使われているのが、ボトックス注射です。
また、ボトックス注射とヒアルロン酸注射を併用する方法もあります。
ただし、ボトックス注射やヒアルロン酸注射は保険適用外です。
費用はクリニックや注入量などによって変わってきます。
ボトックス注射とは?
ボトックス注射とは、A型ボツリヌス毒素による筋弛緩作用でシワを軽減する治療のことです。
注射によって、おでこのシワやほうれい線などを改善する効果に期待できます。
ボトックス注射にかかる時間は、1部位につき5~10分程度です。
個人差はありますが、効果が出るまでには数日~1週間程度かかります。
ヒアルロン酸注射とは?
ヒアルロン酸注射とは、肌に直接ヒアルロン酸を注入する治療のことです。
注射によって、シワ・たるみ・ほうれい線などへの効果に期待できます。
ヒアルロン酸は、もともと人間の体内に存在している成分です。
そのため、安全性が高く、副作用が起こりにくいという特徴があります。
ヒアルロン酸も、ボトックス注射と同じように短時間での施術が可能です。
早い人では注入直後から効果が実感できるでしょう。
おでこのシワにボトックス注射を打つときの注意点

おでこのシワ解消にボトックス注射を考えているかたは、眼瞼下垂の可能性に注意しなくてはなりません。
なぜなら、ボトックス注射を打つと前頭筋の働きが弱まってしまうためです。
眼瞼下垂の症状がある方は、無意識に前頭筋の力を使ってまぶたを持ち上げています。
そのため前頭筋の働きを弱めてしまうと、眼瞼下垂の症状がより強く出てしまうおそれがあります。
その場合はボトックスの打ち方を医師に工夫してもらったり、そもそもボトックス治療の適応になるかを医師に相談することが重要です。
おでこのシワが気になるなら眼瞼下垂かチェック!

おでこのシワで「実年齢よりも老けて見える」とお悩みのかたも多いでしょう。
目を開くときに眉毛を上げるクセがあるなら、眼瞼下垂が原因かもしれません。
眼瞼下垂によるおでこのシワは、手術で解消できる可能性がありますので、安心してください。
シワが深く刻まれていて手術後に残ったとしても、ボトックス注射やヒアルロン酸注射による対処が可能です。
ただし、眼瞼下垂以外が原因でおでこにシワが寄っている場合もあります。
おでこのシワを解消したいとお考えのかたは、クリニックで相談してみてください。
記事監修者
JSKINクリニック医師 牧野潤

慶應義塾大学医学部卒業。形成外科医。シンガポール国立大学病院留学。医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域で従事。
慶應義塾大学病院、埼玉医科大学総合医療センター等勤務を経て、現在は慶應義塾大学医学部 特任助教。
大学病院での臨床・研究と並行し、レーザー・注入施術などの美容医療に特化した「JSKINクリニック」を2021年より経営・監修。