脂漏性角化症(老人性イボ)を自分で取ることはできるのでしょうか。
加齢に伴って目立ってくるのが、老人性イボとも呼ばれる脂漏性角化症です。
顔や腕など目立つ場所に脂漏性角化症ができてしまい、「病院に行かず自分で取りたい」とお考えのかたもいらっしゃるでしょう。病院に行かず除去できるなら手軽ですよね。
本記事では、脂漏性角化症を自分で取ることができるのかについて紹介します。また、予防方法・治療方法も紹介しますので、ぜひ内容をご確認ください。
脂漏性角化症(老人性イボ)とは?
脂漏性角化症とは、イボに似た良性腫瘍です。医学的にはイボではないものの、見た目が似ていることから「老人性イボ」とも呼ばれます。
老人性と呼ばれているのは、40代を過ぎてから加齢とともに増えていくためです。しかし、早い人では20代から脂漏性角化症が出現するでしょう。
通常のイボとは違ってウイルス性ではないため、脂漏性角化症は人には移りません。
脂漏性角化症が特に出やすい部位は、顔・頭・前胸部などです。ただし、手のひらと足の裏以外なら、どこにでも出る可能性があります。
色は褐色から黒色で、大きさは数ミリから、大きくなると1センチ以上となることもあります。
イボとは?
イボとは表皮が厚くなるできものの俗名です。おもな原因として挙げられるのがウイルスや加齢などで、以下のような種類があります。
イボの種類 | 原因 | できやすい場所 |
---|---|---|
尋常性疣贅 | ヒトパピローマウイルス | 手指や爪周辺 |
ミルメシア | ヒトパピローマウイルス | 手や足の裏 |
青年性扁平疣贅 | ヒトパピローマウイルス | 顔・手・背中・首など |
尖圭コンジローマ | ヒトパピローマウイルス | 外陰部・肛門周辺 |
伝染性軟属腫 | 伝染性軟属腫ウイルス | 胸・脇下・肩から肘など |
軟性線維腫 | 加齢・摩擦・紫外線 | 首・まぶた・脇下・鼠径部など |
市販の薬での治療が対象としているのは、一般的なイボ(尋常性疣贅)のみです。削っても細胞やウイルスなどが残っていると再発してしまいます。
ヒトパピローマウイルスとは?
ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス・HPV)とは、どこにでもあるウイルスです。100以上の種類があり、接触によって人の皮膚や粘膜に感染します。
ヒトパピローマウイルスは、イボ以外にも、さまざまな病気の原因となっているウイルスです。代表的な病気には、次のようなものがあります。
- 子宮がん
- 中咽頭がん
- 口腔がん
大抵の場合、症状が出ないうちに体外へと排出されます。
脂漏性角化症(老人性イボ)を自分で取ることは可能?
結論としては、脂漏性角化症を自分で取るのはやめましょう。
イボではないため、市販されているイボ治療薬を使っても脂漏性角化症は改善しません。自分で切ったり削ったりすると、細胞が残って再発するリスクがあります。それだけでなく、不用意に新たなきずを作ってしまったり、感染などをおこす原因にもなりえます。
脂漏性角化症は皮膚科や美容皮膚科など医療機関での治療が必要です。気になるときは、医療機関で相談してみましょう。
脂漏性角化症(老人性イボ)の原因と予防方法
「原因を知って予防したい」とお考えのかたもいらっしゃいますよね。原因と予防方法について紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
脂漏性角化症(老人性イボ)の原因
脂漏性角化症の仕組みは、現在のところ完全には解明されていません。紫外線によって皮膚がダメージを受けると、細胞が異常増殖して脂漏性角化症につながるとされています。
加齢による皮膚の老化も、脂漏性角化症につながるとされる原因のひとつです。また、脂漏性角化症には遺伝も関係していると考えられています。
脂漏性角化症(老人性イボ)の予防方法
脂漏性角化症を防ぐなら、紫外線対策を徹底しましょう。野外でスポーツや仕事をしている人や紫外線対策をしていない人は、特に注意が必要です。
- 日焼け止めを使う
- 外出時は帽子や日傘を使う
- 肌の露出を減らす
- UVカットのカーテンや窓ガラスフィルムを使う
汗をかいたら日焼け止めは塗り直しましょう。帽子や日傘を使うのも、屋外では効果的な対策です。
屋内にいるときも紫外線対策を行ってください。なぜなら、紫外線は窓ガラスをすり抜けて屋内に入り込むためです。
日々の紫外線対策を徹底して、脂漏性角化症の予防に役立てましょう。
脂漏性角化症(老人性イボ)の治療方法
脂漏性角化症になると、治療をしなければ消えません。基本的には良性であるため、治療を受けなくても大丈夫です。しかし、顔や手足にできると目立ってしまうため、治療を検討しているかたも多いでしょう。
代表的な治療方法は、次のようなものです。
- 炭酸ガスレーザー治療
- 液体窒素での冷凍凝固治療
- 外科手術
- IPL
治療方法ごとに概要を紹介します。
炭酸ガスレーザー治療
炭酸ガスレーザーは、脂漏性角化症の治療においては最も有用かつ一般的な手法です。レーザーを使用して皮膚内にある水分を蒸散させ、脂漏性角化症を削り取ります。
もともと色が濃く盛り上がった脂漏性角化症も、治療によりすぐさまに取り除かれるため、治療直後の状態を見て驚く方も多いです。
液体窒素と比べると、色素沈着が起こる期間も短めです。数か月で炭酸ガスレーザー治療後の色素沈着はだいぶ落ち着くでしょう。
液体窒素での冷凍凝固治療
脂漏性角化症は、液体窒素を使った冷凍凝固治療による除去が可能です。保険が適用になる方法であるため、1回あたりの治療にかかる費用が抑えられます。
ただし治療時・治療後の痛みが強いこと、治療した部位が強く色素沈着として残りやすいこと、治療の回数がかかることが、液体窒素での冷凍凝固治療のデメリットです。
脂漏性角化症の数が少なく、そこまで見た目を気にしないのであれば、一般皮膚科での液体窒素治療を試してみるのもよいでしょう。
外科手術
脂漏性角化症は外科手術で除去することも可能です。
初見上、脂漏性角化症以外にも皮膚がんや悪性腫瘍が疑われるときは、一部または全部を切除する必要が生じるでしょう。
局所麻酔を行うため、摘出時の痛みはありません。摘出後はしばらく傷跡が残り、やや長めの線のきずあととして残ります。
IPL
医療機関によっては、IPL(光治療)での治療も可能です。
IPLと聞いて、サロンでの脱毛をイメージするかたも多いでしょう。ニキビやシミの治療にも使われているのがIPLです。
IPLでは、強い光を照射して細胞にダメージを与えます。あまり盛り上がりのない脂漏性角化症なら、IPLでも治療できるでしょう。ただし、盛り上がりがある脂漏性角化症では、十分な効果が得られず、残存や再発のリスクもあります。
脂漏性角化症(老人性イボ)でよくある質問
脂漏性角化症ができて、治療を受けるか迷っているかたもいらっしゃるでしょう。
そこで、脂漏性角化症でよくある質問をピックアップしてみました。脂漏性角化症ができて悩んでいるのでしたら、ぜひ参考にしてみてください。
冷凍凝固治療は1回で終わりますか?
冷凍凝固治療を受けるなら、通常は複数回の施術が必要です。色素沈着が目立つため、冷凍凝固治療以外の方法を推奨している医療機関もあります。
通院にかかる回数は状態によっても違うため、医療機関で相談してみましょう。
脂漏性角化症は治療が必要ですか?
大抵は良性であるため、気にならないなら放置も可能です。悪性なのか気になるときや、様子が変化しているときは、病院での相談をおすすめします。
若くても脂漏性角化症になりますか?
60歳以上のほぼ全員にあるのが、脂漏性角化症です。早ければ20代で出現する場合があるでしょう。一般的には40歳ごろから出現します。
脂漏性角化症を自分で取るのはNG!
見た目にも影響があり気になる脂漏性角化症ですが、自分で取るのはNGです。
脂漏性角化症では、市販のイボ治療薬を使っても効果は得られません。削ったとしても細胞が残ってしまうため、時間が経つと再発するおそれがあります。また、削ろうとすると傷跡が残ってしまう可能性もあるでしょう。
手軽で試しやすい方法が、液体窒素での冷凍凝固治療や炭酸ガスレーザー治療です。
状態によって、適した治療方法には違いがあります。脂漏性角化症を取るのなら、ぜひ皮膚科や美容皮膚科で相談してみてくださいね。
記事監修者
JSKINクリニック医師 牧野潤
慶應義塾大学医学部卒業。形成外科医。シンガポール国立大学病院留学。医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域で従事。
慶應義塾大学病院、埼玉医科大学総合医療センター等勤務を経て、現在は慶應義塾大学医学部 特任助教。
大学病院での臨床・研究と並行し、レーザー・注入施術などの美容医療に特化した「JSKINクリニック」を2021年より経営・監修。