AGA治療で使用する治療薬により、副作用を感じる場合があります。副作用は、薬の成分により症状・発症確率が異なるため、自身が使用する治療薬にはどのような副作用の可能性があるのかを知っておくことが大切です。
本記事では、AGA治療で起こり得る副作用について、症状別・成分別・治療薬別に分けて徹底解説します。
副作用がでたときの対処法もお伝えするため、現在治療中で副作用を感じている方・これからAGA治療をおこなううえでの不安をなくしたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
【症状別】AGA治療薬で起こる副作用の主な症状
AGA治療薬で起こる副作用には、頭痛や食欲不振・かぶれ・性欲減退・気分の落ち込みなどがあります。起こり得る副作用の症状を大きくまとめると、以下のとおりです。
- 体調不良
- 皮膚炎
- 男性機能低下
- 抑うつ
- 多毛症
それぞれにどのような症状が見られるのか、くわしく解説していきます。
体調不良|吐き気・頭痛・食欲不振など
AGAの薬として使用される予防・発毛薬では、吐き気や頭痛・食欲不振・めまい・倦怠感、重篤な症状だと肝機能障害といった症状が起きる可能性があります。
これらの症状が見られる理由は「発毛薬の血管拡張作用で血管を圧迫するから(頭痛)」「治療薬の成分を肝臓で分解する際に負担がかかるから(吐き気・食欲不振)」だと考えられます。
中でも肝機能障害の副作用は、見過ごしたままにしてしまうと、有害物質の分解ができず重篤な状態になりかねません。
症状だけでなく定期的な血液検査で、肝臓の健康状態を把握し観察していくことが大切です。
皮膚炎|かゆみ・赤み・熱感・かぶれなど
発毛効果に期待できるAGA外用薬の副作用で、皮膚に炎症をおこす可能性があります。かゆみや赤み・熱感・かぶれだけでなく、フケがひどくなるといった症状も見られます。
肌が弱い・化粧品などで赤くなりやすい・アレルギー症状を起こしたことがあるといった方は、診察時に医師へ相談するとよいでしょう。
また、治療薬を塗布している部分以外に、皮膚炎の症状が出ることもあります。薬を服用しはじめてから皮膚に異常が出たら副作用の可能性を視野に入れ、クリニックを受診しましょう。
男性機能低下|性欲減退・ED・勃起不全など
予防に使用されるAGAの薬には、男性ホルモンに作用する成分が含まれています。男性ホルモンのバランスが乱れることにより、性欲減退や勃起機能不全・射精障害、さらに睾丸痛や精子の質低下・男性不妊を起こす可能性があるのです。
「性欲減退は全体の1~5%程度」「勃起機能不全・射精障害は全体の1%未満」といった発症確率ですが、睾丸痛・男性不妊についての頻度はわかっていません。
特に妊活中である方は、AGA治療開始時期についてなど医師に相談し、納得のうえで治療を開始するのがよいでしょう。
抑うつ|気分の落ち込み・憂鬱・無気力など
AGA治療薬の中でも、予防薬には抑うつの副作用がでる場合があります。抑うつ状態とは、気分の落ち込みや憂鬱・無気力で何もする気が起きないといった症状のことです。
予防薬は男性ホルモンである「ジヒドロテストステロン(DHT)」を抑制することで、AGAの進行を抑え、予防します。そのためホルモンのバランスが乱れやすく、抑うつ症状を引き起こすと考えられます。
そのまま放置してしまうと、うつ病にまで発展しかねません。医師に相談し、減薬や使用する薬の種類を変えるといった対応が必要か、指示を仰ぎましょう。
多毛症|一部分のみ体毛が増える・濃くなる
一部分のみ体毛が増える・全身の体毛が濃くなるといった多毛の症状も、AGA治療薬の副作用で起こる可能性があります。
AGA治療の中でも発毛薬は、発毛促進効果のあるミノキシジルという成分を配合しています。血管拡張作用もあり発毛成分が全身に回りやすいことから、全身の体毛が濃くなる可能性があるのです。
また、まゆ毛やひげ・顔のうぶ毛といった、一部分のみ体毛が増える「多毛症」は、予防薬成分のデュタステリドや、発毛成分であるミノキシジル内服薬によって引き起こす可能性があります。
【成分別】AGA治療薬で起こる副作用の症状
AGA治療に効果的だとされている薬の成分は、複数あります。中でも日本皮膚科学会の「AGAガイドライン(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)」にて、推奨度最高ランクのAを獲得している成分は、以下の3種類です。
- フィナステリド
- デュタステリド
- ミノキシジル
これらの成分は、起こり得る副作用の症状はそれぞれ異なります。成分ごとに、引き起こす可能性のある副作用の症状を見ていきましょう。
フィナステリドの副作用
フィナステリドは、AGAを予防する・進行を抑えるといった働きのある治療成分です。AGA治療の初期段階で処方されることが多く、一般薬の先発薬ではプロペシア・後発薬(ジェネリック医薬品)ではフィナステリド錠などに含まれています。
【主な副作用】
重大な副作用 | 肝機能障害 | ||
そのほかの副作用 | 〔体調不良〕だるさ・食欲不振・めまい〔皮膚炎〕蕁麻疹〔男性機能低下〕性欲減退・射精障害・精液減少・勃起不全〔抑うつ〕気分の落ち込みなど抑うつ状態など |
デュタステリドの副作用
デュタステリドは、フィナステリド成分と同様にAGAを予防する・進行を抑えるといった働きのある成分です。フィナステリドよりも作用が強い成分となっています。
一般薬の先発薬ではザガーロ・後発薬(ジェネリック医薬品)ではデュタステリド錠などに含まれています。
【主な副作用】
重大な副作用 | 肝機能障害・黄疸 | ||
そのほかの副作用 | 〔体調不良〕頭痛・アレルギー反応・味覚異常・腹部不快感〔皮膚炎〕蕁麻疹・体毛脱落・多毛症・発疹〔男性機能低下〕性欲減退・射精障害・精液減少・勃起不全〔抑うつ〕気分の落ち込みなど抑うつ状態など |
ミノキシジルの副作用
ミノキシジルが使用されている治療薬には、内服薬と外用薬があります。しかし、AGAガイドラインで推奨度Aランクを獲得しているのは「外用薬として使用する場合のみ」です。
そのため本記事では“ミノキシジル外用薬”を取り上げて、症状を解説します。ミノキシジル外用薬を使用した際の主な副作用は、以下のとおりです。
【主な副作用】
そのほかの副作用 | 〔体調不良〕頭痛・めまい・気が遠くなる・心拍が速くなる・原因不明の急激な体重増加・むくみ〔皮膚炎〕頭皮の発疹や発赤・かゆみ・かぶれ・フケ・熱感など |
【治療薬別】AGA治療薬で起こる副作用の確率
AGA治療薬で副作用が起こる確率は、薬に含まれている成分などにより異なります。フィナステリド成分・デュタステリド成分・ミノキシジル成分配合であり、クリニックで取り扱いの多い以下の治療薬を例に、確率を解説します。
- 〔フィナステリド成分〕プロペシア
- 〔デュタステリド成分〕ザガーロ
- 〔ミノキシジル成分〕ミノキシジル外用薬
AGA治療患者全体のどの程度が副作用になる可能性があるのか、チェックしていきましょう。
プロペシアの副作用の確率(フィナステリド成分)
プロペシアは、フィナステリド成分配合の内服薬です。後発となるジェネリック医薬品(フィナステリド錠)を処方されることもあります。
プロペシアの場合、全体のおよそ1~5%未満の確率で、副作用を感じる場合があります。添付文書に記載されている内容は、以下のとおりです。
【プロペシア(フィナステリド成分)の副作用】
頻度不明 | 1~5%未満 | 1%未満 | |
---|---|---|---|
生殖器 | ・睾丸痛・血精液症・男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少・無精子症・精子運動性低下・精子形態異常など) | ・性的欲求の減退 | ・精液量減少・勃起機能不全・射精障害 |
過敏症 | ・そう痒症・じん麻疹・発疹・血管浮腫(口唇・舌・咽頭および顔面腫脹を含む) | ||
肝臓 | ・AST上昇・ALT上昇・γ-GTP上昇 | ||
その他 | ・抑うつ症状・めまい・乳房圧痛・乳房肥大 |
(参考:プロペシア錠0.2mg・1mg添付文書(第3版)|オルガノン株式会社)
ザガーロの副作用の確率(デュタステリド成分)
ザガーロは、デュタステリド成分配合の内服薬です。ジェネリック医薬品(デュタステリド錠)もあり、クリニックによっては後発品であるジェネリックを処方されることもあります。
ザガーロカプセルの場合、全体のおよそ1%未満~1%以上の確率で、副作用を感じる場合があります。添付文書に記載されている副作用についての主な内容は、以下のとおりです。
【ザガーロカプセル(デュタステリド成分)の副作用】
頻度不明 | 1%以上 | 1%未満 | |
---|---|---|---|
過敏症 | ・蕁麻疹・アレルギー反応・瘙痒症・限局性浮腫・血管性浮腫 | ・発疹 | |
精神神経系 | ・浮動性めまい・味覚異常 | ・頭痛・抑うつ気分 | |
生殖系および乳房障害 | ・精巣痛・精巣腫脹 | ・性欲減退・勃起不全・射精障害 | ・女性化乳房・乳頭痛・乳房痛・乳房不快感 |
皮膚 | ・脱毛症(主に体毛脱落)・多毛症 | ||
消化器 | ・腹痛・下痢 | ・腹部不快感 | |
その他 | ・倦怠感・血中CK増加 |
(参考:ザガーロカプセル0.1mg・0.5mg|グラクソ・スミスクライン株式会社)
ミノキシジル外用薬の副作用の確率
ミノキシジル外用薬は、その名前のとおりミノキシジル成分が配合されている薬です。ミノキシジルの添付文書には症状に対する発症確率が記載されていませんでした。
以下、それぞれの症状について、発症の頻度は不明となっています。
【ミノキシジル(外用薬)の副作用】
頻度不明 | |||
皮膚 | 頭皮の発疹や発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感など | ||
精神神経系 | 頭痛、気が遠くなる、めまい | ||
循環器 | 胸の痛み、心拍が速くなる | ||
代謝系 | 原因のわからない急激な体重増加、手足のむくみ |
(参考:ミノキシジルローション5%「JG」|シオノケミカル株式会社)
また、頭髪以外の脱毛や斑状の脱毛・急激な脱毛などが見られた場合も、使用を中止したうえで医師へ相談するように記載されています。
AGA治療の副作用が出たときの対処法は「すぐ医師に相談」
AGAの薬で副作用が疑われる場合の対処法は「すぐ医師に相談すること」です。薬が原因なのか、重篤な症状が出ていないかなど、必ず相談の上、必要に応じて検査してもらいましょう。
また、医師に相談することで、以下のような提案を受けられる可能性があります。
- 減薬や濃度の変更
- 種類の変更
- 薬以外のAGA治療法
AGA治療のための薬は、治療を続ける限り継続して服用・使用しなければなりません。また、AGA治療は薬の使用だけでなく「メソセラピー」「自毛植毛」「LED照射」といった治療方法も検討できます。
薬を使えなければAGA治療ができないわけではないため、無理せず、ご自身に合った治療方法を選択することが大切です。
AGA治療薬の副作用が疑われる場合は服用を中止してもよい?
AGA治療薬の副作用の中には、吐き気やめまい・頭痛・かゆみといった、日常生活に支障を来たしかねない症状があります。
直ちに医師へ相談するのが一番よい対処法です。しかし、すぐにクリニックへ行けない場合には、基本的に服用を中止しても問題ありません。それぞれの治療薬の添付文書にも、異常が認められた場合は投与を中止するなど適切な処置をおこなうことと記載されているためです。
しかし、当たり前ではありますが、治療薬を服用・またはほかの治療法を検討しなければ、AGA治療は進みません。
AGA治療ができなかったと後悔することがないよう、薬の服用をいったん中止し症状が改善したとしても、医師へ相談に行きましょう。
AGA治療薬の副作用でAGA自体は進行しない
「AGAの治療をはじめてから薄毛が進行した」と感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、治療薬が原因ではなく初期脱毛の可能性があります。
初期脱毛とは、AGA治療薬を服用しヘアサイクルを整える過程で、一時的に脱毛症状が見られる状態です。1~2か月程度で症状が落ち着いてくる場合が多くなっています。
AGA治療薬の副作用でAGA自体が進行することはないと考えられますが、気になる場合は医師に相談するのがよいでしょう。
ただし、ミノキシジル外用薬は脱毛に関する以下のような注意書きがあります。
“脱毛状態の悪化や「頭髪以外の脱毛、斑状の脱毛、急激な脱毛など」が見られた場合は、使用を中止し、この説明書を持って医師または薬剤師に相談してください。”
ミノキシジルを使用しているという方で該当の症状が見られた場合、医師に相談するようにしましょう。
まとめ
AGA治療を進める中で、薬による副作用を感じる場合があります。副作用の症状や発症する確率は成分により異なるため、服用開始前にどのような副作用があるのかを理解する必要があるでしょう。
副作用が疑われる場合、医師へ相談することで、減薬や治療薬の変更・薬以外の治療方法を提案される場合があります。
つらい症状を抱えたままのAGA治療とならないよう、しっかりと医師へ相談し、ご自身に最適な方法を見つけてください。
記事監修者
JSKINクリニック医師 牧野潤
慶應義塾大学医学部卒業。形成外科医。シンガポール国立大学病院留学。医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域で従事。
慶應義塾大学病院、埼玉医科大学総合医療センター等勤務を経て、現在は慶應義塾大学医学部 特任助教。
大学病院での臨床・研究と並行し、レーザー・注入施術などの美容医療に特化した「JSKINクリニック」を2021年より経営・監修。