顔や手、二の腕、お腹周りなど、毛は濃くないものの産毛の目立ちが気になることはありませんか?産毛があると肌がくすんで見えたり、肌トラブルを起こしたりすることがあり、脱毛してきれいな肌を維持したいと考える人もいるでしょう。では、医療脱毛で産毛の脱毛は可能なのでしょうか?
この記事では医療脱毛で産毛の脱毛ができるか、効果や脱毛方式の違い、必要回数、メリット・デメリットなどを解説します。
医療脱毛で産毛がなくならないってほんと?
よく「産毛は脱毛できない」「脱毛してもまた産毛が生えてきた」などと言われますが、結論から言えば、医療脱毛で産毛のケアをすることはできます。ただし、産毛は毛髪や脇毛に比べると、色素が薄く細いため効果を実感するまでに時間がかかります。
そのため、効果を実感するまでには個人差が大きく、ほかの部位に比べても施術回数が増える傾向にあります。
そもそも医療脱毛は、毛根のメラニンがレーザーに反応して熱を発生させて、毛を作る細胞を破壊するという作用を利用しています。産毛は色素が薄いためメラニン量も少ないため、使用する脱毛器の方式によっては反応しにくかったり、効果が得られるために時間がかかったりします。
自宅でのお手入れが必要なくなる程度の脱毛効果を得るためには、時間がかかることを理解しておきましょう。
脱毛方式で効果に違いが出る
医療脱毛で使用されている脱毛方式は「熱破壊式」と「蓄熱式」の2つの方式です。この方式は、レーザーの特性を利用して、毛を作る組織そのものに熱を加えて破壊します。組織そのものを破壊するため、複数回施術すると毛自体が生えてこなくなり、半永久的な効果が期待できるのが特徴です。
しかし、「熱破壊式」と「蓄熱式」にもアプローチする場所や照射時間に違いがあり、どちらの方式を採用した脱毛器を使用するかで、効果に違いが出ることがあります。ここでは、それぞれの方式を説明します。
熱破壊式
熱破壊式は「毛母細胞」にアプローチした脱毛方法です。毛母細胞は、毛のもとになる細胞で、毛根の「毛乳頭」と呼ばれる細胞の塊を囲っています。
熱破壊式では、この毛母細胞に高エネルギーのレーザーを照射することで、毛根組織が破壊されて脱毛効果が得られます。前述の通り、照射から約2〜3週間で毛は抜け落ちていき、回数を重ねることでより脱毛効果が期待できるでしょう。
熱破壊式は、濃い毛や太い毛だけでなく、照射範囲が狭いVIO、脇などの部位を得意とします。そのため、産毛を目的とした施術に熱破壊式の脱毛器を使用する場合は、対象をとらえきれず蓄熱式よりも時間がかかってしまう可能性がある点には注意しましょう。
蓄熱式
一方、蓄熱式は「バルジ領域」にアプローチした脱毛方法です。バルジ領域は毛母細胞に栄養を送る部分で肌の表層近くにあり、毛乳頭に指令を出して発毛を促す働きをしています。
蓄熱式では、このバルジ領域にレーザーを照射します。肌を滑らせながらゆっくりと照射するため、熱変性を起こしにくいですが、毛が抜け落ちるまでに約3〜4週間かかるのが特徴です。そのため、濃い毛や太い毛に対するアプローチは苦手で、産毛のような細い毛の脱毛を得意とします。ただし施術者の技量が不十分であったり施術が雑だったりすると、規定のエネルギーをバルジ領域に与えられず、施術箇所全体の効果が不十分になってしまうリスクがあります。
医療脱毛で使用される3つのレーザーの特徴
医療脱毛に使われる主なレーザーは「アレキサンドライトレーザー」「ヤグレーザー」「ダイオードレーザー」の3つです。
それぞれ得意とする毛質が異なるため、産毛がなくならないと感じる場合には、産毛の脱毛が得意なレーザーを使っているか確認しましょう。ここではそれぞれの特徴を紹介します。
アレキサンドライトレーザー
アレキサンドライトレーザーは波長が755nmで真皮層に到達できるレーザーで、日本でもよく使われています。3つのレーザーのうち最も波長が短く、太く濃い毛への照射が得意です。
メラニンへの反応が良いため、黒い毛や太い毛に効果的に効率よく脱毛できるのが特徴です。一方で、日焼けしている肌や色素沈着を起こしている肌に対しての施術は難しく、メラニンが薄い産毛にも効果を発揮しにくいでしょう。
ヤグレーザー
ヤグレーザーの波長は1,064nm皮下脂肪まで到達するレーザーです。3つのレーザーのうち、最も波長が長く、VIOや脇毛などの根深い毛に対してもアプローチできます。
また、アレキサンドライトレーザーでは対応できない日焼け肌や色素沈着した肌にも照射することができるため、幅広い人に対応しています。ただし、波長が長い分、アレキサンドライトレーザーに比べ痛みが強いです。
ダイオードレーザー
ダイオードレーザーの波長は800〜940nmで、アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの中間の波長です。そのため2つのレーザーの中間的な性質を持っており、比較的痛みが少なく、多少の日焼け肌や色素沈着でも脱毛することができます。
またダイオードレーザーは産毛や細い毛にも対応しています。ダイオードレーザーは蓄熱式で少しずつ熱を加えて組織を破壊するため痛みを感じにくく、メラニンに反応しにくい産毛に出力を上げて対応できるのが特徴です。
産毛の医療脱毛の必要回数
前述の通り、産毛の脱毛は時間がかかるのが特徴です。産毛はもともと色素が薄く目立ちにくいことから、施術をしても変化に気づきにくいため「産毛が減ってきたかも」と実感するまでには、少なくとも8回以上の施術が必要になるでしょう。
また、効果が期待できる蓄熱式の脱毛器では、照射後に効果を実感するまでに3〜4週間程度かかります。医療脱毛は毛周期にあわせて施術を行うのが特徴で、平均的に2〜3か月間隔で通います。そのため、脱毛完了までに最低でも1〜1年半かかる計算です。
顔や背中のように広範囲の施術が必要になる場合は、その分時間がかかることもあります。産毛の濃さも個人差があるため、事前にカウンセリングを受けておくと費用や期間が明確になり安心です。
産毛の医療脱毛のメリット・デメリット
産毛のお手入れに限界を感じているときや、産毛が原因で悩みがある場合は医療脱毛を検討してみましょう。医療脱毛を検討する前に、メリットとデメリットを理解しておくことも大切です。
メリット
産毛の医療脱毛のメリットは、産毛がなくなることで毛穴の詰まりや肌荒れなどの肌トラブルを予防できる点です。間違った産毛のお手入れをすると、肌を傷つけてしまったり、産毛が皮膚に埋もれてしまいニキビや埋没毛の原因になることも。産毛を脱毛することでそうしたトラブルのリスクを抑えることができます。
また、産毛がなくなることで肌のトーンがアップしたり、化粧のノリがよくなったりします。スキンケアが浸透しやすくなるほか、ベースメイクをするときに密着度が増すなどの効果も期待できます。
デメリット
産毛脱毛のデメリットは、脱毛回数が多くなりやすい点です。産毛の濃さに個人差はありますが、自宅でのお手入れをしなくて済む程度の効果を得るためには1~1年半以上はかかると心得ておきましょう。
また、産毛は皮膚の薄い部分にも生えているため、施術中に痛みを感じる場合があります。しかし、クリニックのなかには麻酔クリームを使用しているところがあるため、事前に確認するとよいでしょう。
そして、顔などの産毛を脱毛する場合には毛嚢炎のリスクがあります。毛嚢炎はニキビのような発疹が特徴で、施術した部位に細菌が入り炎症を引き起こします。症状が見られる場合は、施術を受けたクリニックを受診して薬の処方を受けましょう。
まとめ
産毛のセルフケアに限界を感じるときは、医療脱毛を検討してみましょう。産毛の脱毛はほかの脱毛に比べて変化が分かりにくく、完了までに時間がかかることがあります。
脱毛を受けても効果を実感しにくいときは、使用するレーザーの種類や出力について医師と相談し、、毛周期に併せて長期的に施術を受けるとよいでしょう。
産毛脱毛のメリット・デメリットを理解して、産毛の医療脱毛を検討してみてはいかがでしょうか。
記事監修者
JSKINクリニック医師 牧野潤
慶應義塾大学医学部卒業。形成外科医。シンガポール国立大学病院留学。医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域で従事。
慶應義塾大学病院、埼玉医科大学総合医療センター等勤務を経て、現在は慶應義塾大学医学部 特任助教。
大学病院での臨床・研究と並行し、レーザー・注入施術などの美容医療に特化した「JSKINクリニック」を2021年より経営・監修。