年齢を重ねてまぶたが重く垂れ下がってきたのなら、眼瞼下垂が原因かもしれません。眼瞼下垂は、長い年月をかけて少しずつ症状が進んでいく病気です。初期は自覚症状がほとんど出ないため、自分では気づかずに放置しているかたも多いでしょう。
本記事では、加齢による眼瞼下垂の症状や治療方法などをわかりやすく解説します。どのような病気なのか、ぜひ内容をご確認ください。
加齢によって起こる「眼瞼下垂」とは?

眼瞼下垂とは、40-50代以降に多く見られるまぶたの状態です。
一般的には、加齢によってまぶたを開ける筋肉や筋などが弱り、まぶたを開きにくくなります。
眼瞼下垂のおもな症状や、発症しやすい年代について見ていきましょう。
眼瞼下垂のおもな症状
眼瞼下垂は時間をかけて少しずつ進行していく病気です。
進行すると、さまざまな症状が出てきます。
初期・中期・後期にわけ、どのような症状があるのかチェックしてみましょう。
初期の眼瞼下垂の症状
初期の眼瞼下垂は、ほとんど自覚症状がありません。
そのため、眼瞼下垂になっていると気づいていないかたも多いでしょう。
わかりづらいものの、初期の眼瞼下垂では次のような変化が見られます。
- まぶたが下がり始める
- 二重幅が広くなる
- まぶたが下がり二重の上にかぶさってくることで、二重が以前よりも狭くなったように感じる方もいます。
ただし、症状には個人差があります。
中期の眼瞼下垂の症状
眼瞼下垂が進んで中期になると、次のような症状が出てきます。
- まぶたが黒目にかかる
- 視野が狭くなる
- まぶたが重くなり開けづらくなる
- 額にシワが寄る
- 眉毛の位置が上がる
- 初期よりも二重幅が広がったようにみえる
- 二重の幅が初期より狭くなり、奥二重や一重のようにみえる
- 眠そうに見える
まぶたが黒目にかかると、上方の視野が狭くなってしまいます。
中期になると「まぶたが重い・目が開けづらい」といった症状に、自分でも気づきやすいでしょう。
無意識のうちにまぶたを上げようとするため、額にはシワが寄り、眉毛の位置が上がります。
また、初期よりも二重幅が広くみえたり、まぶたの皮膚のかぶさりにより奥二重や一重のようにみえることもあります。
後期の眼瞼下垂の症状
後期は、中期で出始めた症状が強くなります。
- まぶたが黒目の中心にかかる
- さらに額にシワが寄る
- 頭痛や肩凝りなどが起こる
- 顎を突き出したような姿勢になる
後期はまぶたが黒目の中心にかかってしまうため、中期よりも視野は狭くなります。
中期よりも額にシワが寄ります。
額の筋肉に負担がかかるため、頭痛や肩凝りなどの症状が出るかたもいます。
無意識に顎を突き出したような姿勢になることも、後期の眼瞼下垂に見られる症状のひとつです。
加齢性眼瞼下垂が発症しやすい年代
加齢性眼瞼下垂が発症しやすい年代は、女性が40代以降、男性が50代以降です。
ただし、病気や怪我などが原因となって、10~20代で眼瞼下垂を発症する場合もあります。40代を過ぎてまぶたが重くたるみ、視野が狭くなっているようなら、眼瞼下垂の可能性が高いと考えられます。
気になる症状があるときは、形成外科や眼科を受診してみましょう。
眼瞼下垂の種類
眼瞼下垂は、大きくわけると以下の種類があります。
- 先天性眼瞼下垂
- 後天性眼瞼下垂
- 偽眼瞼下垂
眼瞼下垂の種類についても、それぞれチェックしてみましょう。
先天性眼瞼下垂
先天性眼瞼下垂とは、生まれつきの眼瞼下垂のことです。
約80パーセントが片側のみで、生後すぐから上まぶたが下がっています。先天性眼瞼下垂のおもな原因は、次の2つです。
- まぶたを上げる筋肉の弱さ
- 神経の不具合
先天性眼瞼下垂は弱視や斜視の原因になる場合もあります。弱視や斜視の傾向がある場合は、手術が必要です。
後天性眼瞼下垂
後天性眼瞼下垂とは、もともとは正常だったまぶたに起こる眼瞼下垂のことです。後天性眼瞼下垂には、次のような原因があります。
- 加齢
- 怪我や病気
- まぶたへの負担
白内障や緑内障などによる手術も、後天性眼瞼下垂の原因のひとつです。ハードコンタクトレンズの使用や、アイメイクが原因で眼瞼下垂になる場合もあります。
偽眼瞼下垂
偽眼瞼下垂とは、眼瞼下垂に似たような症状になっている状態のことです。広い意味では眼瞼下垂なのですが、医学的には別なものとして扱われています。
偽眼瞼下垂の場合、まぶたを上げる筋肉や腱には問題がありません。おもな原因として挙げられるのが、皮膚のたるみです。
原因が違うため、偽眼瞼下垂と眼瞼下垂では治療方法も違ってきます。
加齢による眼瞼下垂は治療が可能?
加齢による眼瞼下垂は、形成外科・眼科・美容外科などでの治療が可能です。
早い段階なら、手術による負担も少なくて済むでしょう。放置していると、見えづらくなるだけでなく、頭痛や肩凝りなどの症状が出る可能性もあります。
眼瞼下垂の可能性があると気づいたら、早めの治療を検討してみてください。
眼瞼下垂の治療方法

眼瞼下垂の治療方法は、手術が基本です。手術には種類があり、進行度合いによって適した方法が変わってきます。
代表的な手術は次のようなものです。
- 挙筋前転術
- 余剰皮膚切除術
- 前頭筋吊り上げ術
- 埋没式挙筋短縮法
どのような手術なのか紹介しますので、ぜひご覧ください。
挙筋前転術
眼瞼下垂の治療で一般的に行われている手術が、「挙筋前転術」です。
挙筋前転術では、二重の線で上まぶたの皮膚を切開して腱膜や筋肉を前方に引っ張り、緩まないように糸で瞼板に縫いつけます。
機能面で支障が出ている眼瞼下垂の治療では、保険適用での挙筋前転術が可能です。見た目の改善を目的に挙筋前転術を受ける場合は、保険適用外となります。
くわしくは、治療を受ける予定のクリニックで相談してみましょう。
余剰皮膚切除術
余剰皮膚切除術とは、文字どおり、身体の余分な皮膚を取り除くための手術です。まぶただけでなく、身体の別な部位でも余剰皮膚切除術が行われています。
偽眼瞼下垂の場合、筋肉ではなく皮膚がたるんだ状態です。
皮膚のたるみが原因で眼瞼下垂のような症状が出ているのなら、余剰皮膚切除術で改善するでしょう。偽眼瞼下垂によって日常生活に支障が出ている場合は、保険適用での余剰皮膚切除術が可能です。
前頭筋吊り上げ術
挙筋前転術での改善が難しい眼瞼下垂に対して行われる手術が、前頭筋吊り上げ術です。
前頭筋吊り上げ術では、太ももの筋膜や糸などで、瞼板と前頭筋をつなぎ合わせます。眉毛を上げる役割を持つ筋肉が、前頭筋です。
前頭筋と瞼板をつなぎ合わせ、眉毛の動きでまぶたを上げます。
埋没式挙筋短縮法
細い糸を使って挙筋を結びつける方法が、埋没式挙筋短縮法です。
埋没式挙筋短縮法は「切らない眼瞼下垂手術」とも呼ばれています。埋没式挙筋短縮法は手術痕が目立たず、ダウンタイムも短めです。
手術痕やダウンタイムが不安なかたは、埋没式挙筋短縮法が向いているでしょう。
ただし、埋没式挙筋短縮法は重度の眼瞼下垂には向いていません。重度の眼瞼下垂で埋没式挙筋短縮法を行うと、何らかの拍子に糸が外れ、もとに戻ってしまう可能性があります。
また、埋没式挙筋短縮法は保険適用外で自費診療です。
加齢による眼瞼下垂は治療が可能!

加齢による眼瞼下垂は、クリニックでの治療が可能です。
眼瞼下垂で治療を受けずに放置していると、症状が進み、頭痛や肩凝りなどの症状につながる可能性があります。そのため、眼瞼下垂なら治療を検討してみましょう。
皮膚のたるみが原因の偽眼瞼下垂も、治療による改善が可能です。どのくらい症状が進んでいるかによって、適した治療方法には違いがあります。
眼瞼下垂でお悩みでしたら、ぜひクリニックで相談してみてくださいね。
記事監修者
JSKINクリニック医師 牧野潤

慶應義塾大学医学部卒業。形成外科医。シンガポール国立大学病院留学。医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域で従事。
慶應義塾大学病院、埼玉医科大学総合医療センター等勤務を経て、現在は慶應義塾大学医学部 特任助教。
大学病院での臨床・研究と並行し、レーザー・注入施術などの美容医療に特化した「JSKINクリニック」を2021年より経営・監修。