眼瞼下垂は、皮膚切除のみで治療できるのでしょうか。「余っている皮膚の切除で解消するのでは?」と思われるかたも多いでしょう。
本記事では、眼瞼下垂が皮膚切除のみで治療できるのかを紹介します。眼瞼下垂で行われる手術の種類や、眼瞼下垂でよくある質問も紹介しますので、ぜひ参考としてチェックしてみてください。
眼瞼下垂は皮膚切除のみでの治療が可能?

結論から申し上げますと、眼瞼下垂は皮膚切除のみでは治療できないことが多いです。なぜなら、眼瞼下垂は「まぶたを引き上げる筋肉のたるみ」が起きている状態であるためです。まぶたの皮膚のたるみである「眼瞼皮膚弛緩」が主であれば、皮膚切除による改善が見込めます。
- 眼瞼下垂(筋肉のたるみ)
眼瞼下垂手術が必要 - 眼瞼皮膚弛緩(皮膚のたるみ)
皮膚切除術が必要 - 眼瞼下垂+眼瞼皮膚弛緩
眼瞼下垂手術、または眼瞼下垂手術と皮膚切除術が必要
「眼瞼皮膚弛緩」とは、厳密には偽眼瞼下垂と表現されることもあります。眼瞼下垂と偽眼瞼下垂についても、どのようなものか紹介します。
眼瞼下垂とは?

眼瞼下垂とは、まぶたが下がって視野が狭くなり、見づらくなってしまう病気です。おもな症状には次のようなものがあります。
- まぶたが重くて開きにくい
- 視野が狭くなって見えにくい
- 額にシワがよる
- 目を開けるときに無意識に眉毛の位置が上がる
- なんとなく眠そうに見える
シワが寄ったり眉毛の位置が上がったりするのは、額の筋肉を使って無意識に目を開けやすくしようとしているためです。ただし、初期の眼瞼下垂には自覚症状がほとんどないため、まったく気づいていないかたも多いでしょう。
眼瞼下垂は自然に治ることはないため、加齢とともに症状は少しずつ進んでいきます。眼瞼下垂のおもな原因は加齢です。
早い人では30~40代から眼瞼下垂の症状が出始める可能性があります。眼瞼下垂の根本的な治療には手術が必要です。
偽眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂に似ている状態が、「偽眼瞼下垂」です。まぶたを上げる筋肉や腱などには特に問題がないため、偽眼瞼下垂と呼ばれます。偽眼瞼下垂の原因はさまざまです。
- 眼瞼皮膚弛緩
まぶたの皮膚のたるみ - 眉毛下垂
加齢で眉が下がっている状態 - 眼瞼けいれん
まぶたを閉じる筋肉が過度に緊張している状態 - 小眼球症
先天的に眼球が小さい疾患
偽眼瞼下垂では、原因に合った治療が行われます。
眼瞼下垂の手術の種類

効果的な薬や注射がないため、眼瞼下垂の治療では手術が必要です。手術には次のような種類があります。
- 挙筋前転術(挙筋短縮術)
- 余剰皮膚切除術(眉下切開)
- 前頭筋吊り上げ術
- 埋没式挙筋短縮法
4つの手術について、それぞれの概要を見ていきましょう。
挙筋前転術
眼瞼下垂で多く行われている手術が、挙筋前転術です。挙筋前転術では、二重の線で切除して、伸びてしまった眼瞼挙筋を縫い付けて再固定します。
上まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋が伸びている状態なら、挙筋前転術が適しているでしょう。
機能面の改善を目的とした挙筋前転術は保険適用が可能です。挙筋前転術は、重度の眼瞼下垂には対応できない場合があります。
余剰皮膚切除術
偽眼瞼下垂のうち、眼瞼皮膚弛緩で行われる手術が余剰皮膚切除術です。皮膚のたるみが強い状態が主で、筋肉や腱に問題がないのなら、余剰皮膚切除術で改善するでしょう。
一部の余剰皮膚切除術は保険適用です。機能面での問題がない場合は、保険適用外となります。
前頭筋吊り上げ術
先天性の眼瞼下垂で行われる手術が、前頭筋吊り上げ術です。前頭筋吊り上げ術では、額の筋肉である「前頭筋」を直接まぶたにつなげて持ち上げます。
本来、前頭筋は額の皮膚を持ち上げる役割を持つ筋肉であるため、まぶたを持ち上げる力自体はそれほど強くありません。上眼瞼挙筋やミュラー筋が機能していない場合は、前頭筋吊り上げ術が行われます。
埋没式挙筋短縮法
「切らない眼瞼下垂手術」とも呼ばれる手術が、埋没式挙筋短縮法です。通常の眼瞼下垂手術と違い、埋没式挙筋短縮法では切開を行いません。埋没式挙筋短縮法では、皮膚に小さな穴を作り、眼瞼挙筋を糸で結んでまぶたを引き上げます。
切開がないため保険は適用外となりますが、埋没式挙筋短縮法はダウンタイムが短めです。
眼瞼下垂で保険が適用されないパターン

治療を検討するにあたり、保険適用の有無は気になるポイントのひとつです。そこで、眼瞼下垂で保険が適用されないパターンをチェックしてみましょう。
以下の治療は保険の適用外です。
- ごく軽度の眼瞼下垂である
- 視野に問題がない
- 外見の変化を目的とした治療である
- 皮膚を切らない
軽度で視野狭窄がない眼瞼下垂は保険適用外です。また、機能の改善ではなく、美容が目的の治療にも保険が適用されません。埋没式挙筋短縮法のように、皮膚を切らない手術も保険適用外です。
保険適用の手術が適しているかどうかは、治療を受ける人の目的によって違います。美容面での改善を目的としているのなら、適しているのは保険適用外の手術です。
どちらが向いているか悩むときは、クリニックを受診して相談してみましょう。
眼瞼下垂の治療でよくある質問

眼瞼下垂の治療でよくある質問も紹介します。「眼瞼下垂かもしれない」とお悩みでしたら、ぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂は自力で治せますか?
残念ながら、眼瞼下垂は自分では治せません。なぜなら、ゆるんだ眼瞼挙筋を鍛えることが困難であるためです。
治療するためには、手術を受ける必要があります。
眼瞼下垂の手術後はどのような変化がありますか?
眼瞼下垂の手術を受けると、次のような変化があります。
- まぶたを開きやすくなる
- 視野が広くなる
- 眉毛を無理に上げなくても目を開けやすくなる
- 額のシワができにくくなる
また、眼瞼下垂で頭痛や肩凝りなどの症状が出ているなら、改善する場合が多いでしょう。
眼瞼下垂になったら手術を受けるべきですか?
眼瞼下垂は「絶対に治療するべき病気」というわけではありません。生活に支障が出ていないのなら、手術を受けずに様子を見ても問題ないでしょう。
ただし、眼瞼下垂は少しずつ症状が進行していく病気です。放置していると、次のような症状が出てきます。
- まぶたが黒目に被さって視野が狭くなる
- 眉毛を上げるため額にシワが寄り、徐々に刻まれていく
また、額の筋肉に負担がかかるため、頭痛や肩凝りなどの症状が出る場合もあります。
気になる症状があるのなら、治療を検討してみましょう。
眼瞼下垂の手術痕は目立ちますか?
挙筋前転術で切除するのは二重のラインです。そのため、目を開けていて傷跡が見えることはないでしょう。
手術後はダウンタイムがあるものの、1か月ほどで落ち着きます。
眼瞼下垂の手術は視力に影響しますか?
眼瞼下垂の手術を受けても、視力には影響しません。なぜなら、まぶたの表側から手術を行い、裏側には何もしないためです。また、視神経は眼球の裏側を通っているため、傷がつく心配もありません。
視野が広くなるため、手術前より見やすくなるでしょう。
眼瞼下垂は皮膚切除のみでは治療できない!
眼瞼下垂は、加齢やまぶたへの負担などによる、筋肉のたるみによって起こります。そのため、皮膚切除のみでは治療できません。皮膚のたるみが原因となる偽眼瞼下垂であれば、皮膚切除で改善できるでしょう。
似たように見えても、眼瞼下垂と偽眼瞼下垂では原因や治療法が違います。
まぶたのたるみが気になっているのなら、まずはクリニックで相談してみてくださいね。
記事監修者
JSKINクリニック医師 牧野潤

慶應義塾大学医学部卒業。形成外科医。シンガポール国立大学病院留学。医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域で従事。
慶應義塾大学病院、埼玉医科大学総合医療センター等勤務を経て、現在は慶應義塾大学医学部 特任助教。
大学病院での臨床・研究と並行し、レーザー・注入施術などの美容医療に特化した「JSKINクリニック」を2021年より経営・監修。