首のイボについて検索すると、ドラッグストアで購入できる市販薬の情報や、市販薬のランキング記事などが出てきます。そのため、病院に行かず自分でとりたいと考えるかたも多いのではないでしょうか。
本記事では、市販薬で首のイボが除去できるのかを紹介します。クリニックでの治療方法についても紹介しますので、ぜひ参考としてご覧ください。
首のイボは市販薬でとれない
残念ながら、首のイボは市販薬を使ってもとれません。首のまわりにできるイボには以下のような種類があります。
- アクロコルドン
- スキンタッグ
- 軟性線維腫
- 脂漏性角化症
首のイボの多くは、アクロコルドン・スキンタッグ・軟性線維腫と呼ばれる良性の腫瘍です。また、老人性イボと呼ばれる脂漏性角化症が出る場合もあります。
いずれも薬では効果が出ないため、病院でもレーザーや液体窒素、ハサミなどを使って除去しているのです。首のまわりにできるイボが気になっているのなら、クリニックで除去してもらいましょう。
イボの除去を目的とした市販薬の成分
イボの種類によっては、市販薬で改善に期待できる場合があります。ただし、その場合も、時間がかかってしまうでしょう。
イボの除去を目的とした市販薬に含まれている代表的な成分は、次の2つです。
- ヨクイニン
- サリチル酸
2つの成分について、どのようなものか紹介します。
ヨクイニン
イボや肌荒れなどの改善を目的に使われている成分が、ハトムギの種皮を取り除いたものである「ヨクイニン」です。病院でも、保険適用でヨクイニンが処方されることがあります。
ウイルス性のイボである尋常性疣贅や、水イボと呼ばれる伝染性軟属腫なら、ヨクイニンが一定の効果を示すことがあります。
しかし、首まわりにできるアクロコルドンや脂漏性角化症にはヨクイニンの効果が期待できません。
ヨクイニンには子宮収縮作用があるため、妊娠中の服用は避ける必要があります。
サリチル酸
イボの剥離を目的として使われている成分が、サリチル酸です。市販の薬では貼るタイプ・塗るタイプの2種類が販売されています。
サリチル酸は角質をやわらかくする働きを持つ成分です。
顔や粘膜、炎症がある部分などには使えません。サリチル酸によって効果が得られるのは、角質化した硬いイボのみです。
市販薬で首のイボをとるのがNGな理由
イボの種類によっては市販薬で改善できるかもしれません。ただし、基本的に市販薬でイボをとるのはおすすめしていません。
その理由として挙げられるのが次の2つです。
- イボの種類によっては効果がないため
- 悪化のリスクがあるため
2つの理由について、それぞれ解説します。
効果が得られないため
市販薬で首のイボをとるのがNGな理由は、効果が得られないためです。
首まわりにできるイボの多くはやわらかく、サリチル酸の使用には適していません。また、ウイルス性ではないため、ヨクイニンを飲んでも効果は得られないでしょう。
首まわりのイボは、病院で治療してもらう方法が確実です。
悪化のリスクがあるため
悪化のリスクがあることも、市販薬でイボをとるのがNGである理由のひとつです。
サリチル酸を皮膚の薄い部分に塗ると、白くふやけて剥がれてしまいます。悪化や肌トラブルのリスクがあるため、使用はおすすめできません。
イボやほくろ除去を目的とした海外製クリームに注意
イボやほくろが気になっていても、海外製クリームを個人輸入するのはやめましょう。なぜなら、重篤な皮膚障害につながるおそれがあるためです。
2023年12月、国民生活センターでは、海外製クリームの「点痣膏」に対して注意喚起を行いました。また、厚生労働者のホームページでも、「点痣膏」による健康被害情報が紹介されています。
・70代女性が、SNS上の動画広告で知った、いぼ、ほくろ取りクリーム「点痣膏」(使用量不明)を通信販売で入手し、外用した。・前額部のほくろ5カ所に、使用説明動画では20秒のところ、20分くらいつけていたところ、赤く腫れ皮膚の変色が生じた。翌日医療機関を受診したところ、皮膚壊死を伴う円形の皮膚潰瘍2カ所と、発赤を伴う痂皮(かさぶた)付着局面が3カ所確認され、化学熱傷が疑われた。・クリームは強いアルカリ性を示すものだった。 (インターネット等で購入した未承認医薬品等・健康食品(医薬品成分含む)の健康被害情報|厚生労働省) |
「点痣膏」に限らず、SNS広告で気になる海外製の商品を見かける場合もあるでしょう。動画や画像を見て、魅力的な商品だと感じられるかもしれません。
しかし、海外製の化粧品や医薬品は安全性が確認されていないものも多くて危険です。健康被害に遭わないためにも、海外製の商品を個人輸入して使わないよう、注意してください。
首のイボの代表的な治療方法
首まわりにできたイボが気になっているのなら、皮膚科や美容皮膚科などクリニックで相談する方法がおすすめです。クリニックではイボの種類を調べたうえで、適切な治療方法を提案してくれます。
首のイボの代表的な治療方法は次のようなものです。
- 炭酸ガスレーザー
- ラジオ波メス
- ハサミ・メスでの手術
- 液体窒素による凍結療法
治療方法についてそれぞれ解説します。
炭酸ガスレーザー
イボや盛り上がっているほくろの除去に適している方法が、炭酸ガスレーザー治療です。
炭酸ガスレーザーを使うと、肌の奥にある組織や周辺の皮膚にダメージを与えずにイボ・ほくろを蒸散させられます。
局所麻酔によって、施術中の痛みはほとんどありません。メスを使う外科的な手術と比べると傷跡も少なく、施術も短時間です。熱凝固作用によって周囲の血管が固まるため、ほとんど出血もないでしょう。
期間には個人差があるものの、施術後3か月程度は赤みや跡が残ります。
なお、炭酸ガスレーザーは保険適用外です。費用はクリニックや照射数によって違いがありますので、カウンセリングで相談してみてください。
ラジオ波メス
高周波の機械でイボやほくろを除去するのがラジオ波メスです。ラジオ波メスを使うと、周囲へのダメージを抑えつつ、皮膚の表面にあるできものを除去できます。
炭酸ガスレーザーと同じように、ラジオ波メスも保険適用外です。費用はクリニックや照射数などで違ってきます。
局所麻酔を使うため、施術中の痛みはほとんどありません。ラジオ波メスを照射した部位は浅い傷となり、7~10日ほどで塞がるでしょう。傷跡や赤みが軽減するまでには3~6か月程度かかります。
ハサミ・メスでの手術
イボやほくろは、ハサミやメスで切除する方法もあります。ハサミやメスを使った手術は、大きなイボやほくろに適している方法です。
切除後に縫合した場合は、およそ1週間後頃に抜糸が必要になります。ハサミやメスを使う手術は保険適用であるため、費用を抑えられます。
液体窒素による凍結療法
イボやほくろの治療には、液体窒素を使った凍結療法もあります。
綿棒などで患部にマイナス196度の液体窒素をあて、細胞を凍結・壊死させる方法です。壊死したイボやほくろはかさぶたになって落ち、新しい皮膚が再生します。痛みはあるものの、施術後すぐに落ち着くでしょう。
週1回までの施術は保険適用が可能です。ただし、凍結療法は1~2週間おきに複数回施術を繰り返さなくてはなりません。施術を繰り返すことによって、正常な皮膚のみにすることが可能です。
凍結療法には、茶色く色素沈着しやすいというデメリットがあります。色素沈着を避けたい場合は、炭酸ガスレーザーやラジオ波メスなどの方法がおすすめです。
首のイボならクリニックでの相談がおすすめ
市販薬を使っても首のイボはとれません。健康被害を引き起こしてしまうおそれがあるため、興味があっても海外製の商品を個人輸入するのはやめましょう。
複数のイボができている場合、おすすめは複数個所に施術できる炭酸ガスレーザー治療です。ただし、イボの種類によって、合っている治療方法には違いがあります。
イボが目立っていて気になるようなら、まずはクリニックで診察を受け、医師に相談してみてくださいね。
記事監修者
JSKINクリニック医師 牧野潤
慶應義塾大学医学部卒業。形成外科医。シンガポール国立大学病院留学。医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域で従事。
慶應義塾大学病院、埼玉医科大学総合医療センター等勤務を経て、現在は慶應義塾大学医学部 特任助教。
大学病院での臨床・研究と並行し、レーザー・注入施術などの美容医療に特化した「JSKINクリニック」を2021年より経営・監修。