まぶたのたるみと眼瞼下垂の違いとは?原因と治療法を医師がわかりやすく解説
この記事ではまぶたのたるみと眼瞼下垂の違いについて解説します。
まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)とは

まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)とは、加齢や紫外線、生活習慣などの影響でまぶたの皮膚が弾力を失い、余剰な皮膚が垂れ下がる状態を指します。
視野の遮りや目周りの老け感が目立つ症状として現れることがあり、治療法としては軽度の場合には超音波や高周波の機器を用いた治療やヒアルロン酸注射など、また中等度以上の場合には、上眼瞼皮膚切除術や眉下切開術などの外科的手術が行われます。
眼瞼下垂とは

眼瞼下垂とは、まぶたが垂れ下がって視野が狭くなり、見えにくくなる状態のことです。初期の眼瞼下垂には自覚症状がほとんどないため、まったく気づかずに過ごしている人も多く見られます。
しかし、眼瞼下垂は進行する病気です。症状が進んでくると見えにくくなり始め、頭痛や肩凝りなどの症状が出る場合もあります。
まぶたのたるみと眼瞼下垂の違い
項目 | まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症) | 眼瞼下垂 |
---|---|---|
原因 | 皮膚のたるみ(加齢、紫外線、摩擦など) | まぶたを挙げる筋肉や腱膜の弱化、神経麻痺など |
症状 | 目を開けたときにたるんだ皮膚が垂れ下がり、見た目の老化や視野の遮りがおこる視野障害、額のシワ、肩こり、頭痛 | 目を開けたときの開きが低下し、黒目にかかる範囲が大きくなる視野障害、額のシワ、肩こり、頭痛 |
治療法 | 皮膚切除術、デバイス治療(ハイフやRF等)、ヒアルロン酸 | 挙筋前転術(眼瞼下垂症手術)、切らない眼瞼下垂症手術 |
保険適用 | 診察の上、保険適用となる場合あり。症状が認められない場合は原則自費治療。 | 診察の上、挙筋前転術は保険適用の場合あり。切らない眼瞼下垂症手術は原則自費治療。 |
まぶたのたるみは主に皮膚の問題であり、見た目の改善が主な目的となることが多いです。ただしたるみの程度が強い場合はまぶたを開けにくくなり、眉毛の挙上、頭痛や肩こりの原因となる場合があります。そのような強い症状が認められる場合は、症状改善目的の治療として、保険適用となることもあります。
眼瞼下垂はまぶたを引きあげるための筋肉や腱膜の問題であり、視野障害や生活の質に影響を大きな与えるため、治療を目的とする場合は保険適用になることが多いです。
症状が似ているため、正確な診断を受けることが重要です。形成外科や眼科での診察を通じて、自分の状態に合った治療法を選択することをおすすめします。
外見的な違い

まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)
まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)は、上まぶたの皮膚の弾力が低下し、余剰な皮膚が垂れ下がることで目元が重たく見えたり、まつ毛の根元が隠れるほど皮膚が下がるといった状態を指します。
結果として、老けた印象や疲れた印象、元々よりも目が小さくなったように感じることがあります。加齢や紫外線ダメージ、生活習慣(喫煙や睡眠不足)、遺伝的要因、さらに長期間のアイメイクなどが影響しうるといわれています。
眼瞼下垂
眼瞼下垂は、上まぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋)の機能低下によってまぶたが下がり、瞳孔にかかって目が開きにくくなる状態を指します。
額の筋肉を使ってまぶたを持ち上げようとするため、額に深いシワができたり、眠たそうな表情や目つきが悪く見えることがあります。
その原因には生まれつき筋肉が発達していない先天性や、加齢、ハードコンタクトレンズの長期使用、外傷、神経麻痺などの後天性が含まれます。
視野への影響の有無

まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)
視野への影響
- 軽度の場合、視野への影響はほとんどない。
- 重度の場合、垂れ下がった皮膚が視界を遮ることがある。
- 視野障害が発生する場合は、特に上方視野が狭くなる。
- 症状が進行すると、眼精疲労や頭痛、肩こりなどの二次的な症状が現れる。
眼瞼下垂
視野への影響
- 視野障害が顕著で、特に上方や外側の視野が狭くなる。
- 視界を確保するために、頭を後ろに傾けたり、眉を上げたりする姿勢を取ることが多い。
- 症状が進行すると、眼精疲労や頭痛、肩こりなどの二次的な症状が現れる。
診断のポイント

眼瞼下垂の診断基準
- MRD(目を開けたときの上まぶたと黒目との距離)の測定値がおよそ3.5mm以下の場合、眼瞼下垂の可能性がある。
- 視野障害や肩こり、頭痛などの付随症状がある場合は、それが眼瞼下垂によるものなのかについて、形成外科医への相談がおすすめ。
まぶたのたるみとの違い
- まぶたのたるみは主に皮膚の余剰が原因で、視野への影響は軽度。
- 眼瞼下垂は筋肉や腱膜の問題が原因で、視野障害や機能的な問題を伴う。
専門医の受診
- 形成外科医への相談がおすすめだが、眼科や美容外科でも相談可能。
- 形成外科では、保険適用・保険適用外(自費治療)の両方で対応できることが多い。
- 眼科では眼球の異常がないかの検査や、一部の保険適用手術に対応が可能。
- 美容外科では原則すべて自費治療となることが多く、医院に事前に確認が必要。
まとめ
まぶたのたるみと眼瞼下垂は原因や症状が異なるため、適切な治療法を選ぶことが重要です。
まぶたのたるみは皮膚の弾力低下が主な原因で、軽度の場合は非外科的治療、重度の場合は皮膚切除術が有効です。
一方、眼瞼下垂は筋肉や腱膜の機能低下が原因で、視野障害を伴うことが多く、挙筋前転術などの手術が必要になります。気になる方は、専門医に相談し、正確な診断を受けましょう。
JSKINクリニック東京銀座
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執筆者
JSKINクリニック医師 牧野潤

慶應義塾大学医学部卒業。形成外科学会認定専門医。
在学中にシンガポール国立大学留学。卒業時に医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにて医療・IT分野で従事。初期臨床研修後、慶應義塾大学医学部 形成外科に入局。以降、慶應義塾大学病院及び関連病院にて勤務。2021年11月にJSKINクリニック東京銀座を設立。2024年6月に慶應義塾大学病院 美容外来を開始。
現在、JSKINクリニック代表医師、慶應義塾大学医学部 形成外科 助教。
日本形成外科学会、日本美容外科学会(JSAPS)正会員。形成外科・美容外科学会にて口演及び登壇多数。