悩みの多い毛穴対策を、2つのシンプルな分類で解説します
この記事では美容皮膚科の視点から、多くの方が陥りがちな「毛穴ケアの誤解」を解き明かし、複雑に見える毛穴の悩みを「多すぎるもの」と「少なすぎるもの」というシンプルな視点で解説します。
毛穴に関するよくある誤解
皮脂は汚いもの?
皮脂というと、「皮脂づまり」「皮脂汚れ」といった皮脂が悪者のようなイメージを持たれることが多いようです。
しかしながら皮脂は美肌にかかせない、最上級の天然保湿クリームといえます。具体的には、以下のような役割を果たしています。
- 肌の潤いを保つためのふたとしての役割
- ほこりや摩擦といった外部の刺激から守る保護としての役割
- 肌表面を弱酸に保ち、雑菌の繁殖を防ぐ役割
この働きを理解し、皮脂を味方につけることが重要です。
毛穴ケアをすれば毛穴の数を減らせる?
医学的にはお顔には約20万あり、特に多くの人が気になる皮脂腺開口部はそのうち数万ほどであると言われています。(ホンマでっかTVでもコメントさせていただきました)
そしてこの毛穴の数というのは、どんなに頑張ってケアをしても減ることはありません。
つまり毛穴の数が問題なのではなく、その質が重要ということです。
ニキビ跡のクレーターも毛穴ケアで改善する?
毛穴が開いて見えるクレーター状のニキビ跡。「これも毛穴の一種だから、毛穴ケアを頑張れば良くなるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし残念ながら、ニキビ跡のクレーターは、単なる毛穴の開きとは根本的に異なります。
これは、ニキビによる強い炎症の名残であり、皮膚の深い部分がダメージを受けて固定されてしまった一種の瘢痕(きずあと)と考えるべきです。
瘢痕となってしまった皮膚組織を、通常の毛穴ケアで元に戻すことは極めて困難です。
ニキビ跡のクレーターや色素沈着は、毛穴の悩みと混同されがちですが、実は全くの別物です。もしニキビ跡でお悩みでしたら、自己判断でケアを続けるのではなく、一度クリニックにご相談ください。
理想的な毛穴の状態とは
適切な毛穴ケアをするためには、まずは理想的な毛穴の状態を知っておく必要があります。
その状態とは以下のような状態です。
- 毛穴がクリーンであること
- 毛穴にハリと弾力があること
- 毛穴がなめらかに潤っていること
この「清潔で、ハリがあり、潤っている」という理想的な毛穴環境を目指していきます。
「〇〇毛穴」というタイプ分類の落とし穴
「詰まり毛穴」「たるみ毛穴」など、あなたはどの毛穴タイプ?といった表現が一般的になりつつあります。
しかし、実際の毛穴の悩みは、どれか一つのタイプにきれいに分類できるものではありません。
実際には複数の要因が複雑に絡み合い、現在の毛穴の状態を作り出しているケースがほとんどです。
そのため、一つの原因に絞ったケアだけでは、十分な効果は得られません。
大切なのはタイプ分類にとらわれることではなく、まずはご自身の肌で起きていることを正しく理解することです。
そして、今ある悩みの改善と今後のトラブルを防ぐ予防的な視点の両方から、肌全体のコンディションを整える全般的なケアを行うことです。
毛穴悩みの正体は「過剰」と「不足」でシンプルに理解する
では、「どうすれば自分の毛穴の状態を正しく理解できるの?」と思いますよね。
ここで、複雑な毛穴の悩みを驚くほどシンプルに捉えるための考え方をご紹介します。それは、ご自身の肌の状態を、
- 本来、少ない方が良いのに「多すぎて」困るもの
- 本来、あった方が良いのに「少なくて」困るもの
この2つの視点で整理してみる方法です。
言わば、スキンケアにおける「引き算」と「足し算」の考え方です。
このシンプルな物差しを使うことで、なぜ今あなたの毛穴が目立っているのか、そして本当に必要なケアは何なのかが、きっとクリアに見えてくるはずです。
本来少ない方が良いのに、多いと困るもの
①角栓
角栓は「皮脂の塊」と誤解されがちですが、実際は毛穴の中で、「古い角質」と「皮脂」が混ざり合ってできます。70%が角質、30%が皮脂ともいわれています。
元々は白っぽい角栓ですが、表面の部分が空気に触れて酸化すると、黒く変色します。これが毛穴の黒ずみを引き起こします。
角栓への対策
角栓ケアの基本は、以下の2つになります。
- ターンオーバーを促して古い角質を薄くすること
- 過剰な皮脂の分泌を抑制すること
クリニックで行える角栓対策の治療としては、以下が挙げられます。
ケミカルピーリング:
薬剤で古い角質を溶かし、肌のターンオーバーを正常化させます。(サリチル酸マクロゴール、マッサージピールなど)
アゼライン酸やレチノール配合のドクターズコスメ:
医療機関専売のスキンケア製品です。ご自宅での継続的なケアとして、角栓の予防・改善に高い効果が期待できます。
イソトレチノイン(内服薬):
皮脂腺を縮小させ、皮脂の分泌を根本から抑制する内服薬です。重度のニキビ治療に用いられることが多いですが、皮脂分泌が非常に多く、他の治療では改善が難しい角栓に対しても処方されることがあります。
あまりおすすめしていないケア・治療
ハイドラフェイシャル:一時的に角栓は除去されすっきりしますが、根本的な対策をしない限りすぐに戻ります。
毛穴パック:角栓を剥がす毛穴パックや、爪で無理やり押し出すといった行為はやめましょう。肌を傷つけ、毛穴の開きや炎症、色素沈着を招く原因となります。
②濃い毛
一生懸命ケアをしても改善しない毛穴の黒ずみ。その正体は、角栓ではなく「毛」そのものかもしれません。
顔の産毛が太かったり密集していたりすると、毛そのものが毛穴の中で黒い点として目立ってしまいます。この場合、角栓を取り除くためのスキンケアを続けても、見た目の変化はほとんど期待できません。
このような「毛」が原因の黒ずみに対して、最も有効、かつ唯一のアプローチが「医療レーザー脱毛」です。
医療レーザー脱毛は、毛根の組織を根本から破壊する治療法です。毛がなくなることで毛穴自体も目立ちにくくなります。
あまりおすすめしていないケア・治療
自分で毛を抜くこと
毛抜きでの自己処理は、肌や毛穴を傷つけ、埋没毛や毛嚢炎(もうのうえん)、色素沈着といった新たなトラブルを引き起こす原因になります。
エステ脱毛
エステで行われる光脱毛は、毛根を破壊するほどのパワーはなく、効果は一時的な「減毛・抑毛」にとどまります。そのため、黒ずみ改善という目的を達成するのは難しいでしょう。
③炎症
そしてもっとも厄介なのが、この「炎症」です。炎症の怖さは、治まった後にも様々な跡を残してしまう点にあります。
もし今、あなたの毛穴が赤く腫れていたり、痛みを伴うニキビになっていたりするならば、他のどんなスキンケアよりも優先して、まずその炎症をなるべく早期に鎮めることが鉄則です。
また炎症の名残としてできる茶色いシミ(炎症後色素沈着:PIH)や、赤い跡(炎症後紅斑:PIE)については、急性の炎症が落ち着いた以降に個別の対策が必要になります。
クリニックでの専門的な治療
自己判断でのケアは症状を悪化させ、跡を残すリスクを高めます。炎症のサインが見られたら、速やかにご相談ください。
急性の炎症:抗生物質(内服薬、外用薬)
ニキビの原因となるアクネ菌の増殖を抑え、炎症を鎮静化させます。
茶色いシミ(炎症後色素沈着:PIH):炎症によって過剰に作られてしまったメラニン色素にアプローチします。
ケミカルピーリング
肌のターンオーバーを促し、メラニン色素の排出を助けます。
フォトフェイシャル(光治療)
光エネルギー(IPL)を照射し、シミの原因であるメラニンにダメージを与え、色素沈着を改善します。
エレクトロポレーション
特殊な電気パルスを用いて、美白有効成分(ビタミンC、トラネキサム酸など)を肌の深層部まで浸透させます。
外用薬(ハイドロキノン、トレチノインなど)
メラニンの生成を抑えたり、排出を促したりする塗り薬を処方します。
赤い跡(炎症後紅斑:PIE):炎症によって拡張してしまった毛細血管にアプローチします。
Vビーム(色素レーザー)
赤みに特異的に反応するレーザーで、より効果的に毛細血管に働きかけます。
光治療(IPL)
光のエネルギーが血管内のヘモグロビン(赤みのもと)に反応し、赤みを軽減させます。
本来あった方が良いなのに、少なくて困るもの
さて、ここからは毛穴ケアにおける「足し算」の考え方です。
肌の美しさと健康を保つために、本来は十分に満たされているべきなのに、様々な原因で「不足」してしまうものたちを見ていきましょう。
①コラーゲンとエラスチン
少なくて困るものの筆頭が、肌のハリと弾力を司るコラーゲンとエラスチンです。
これらは皮膚の深い部分(真皮層)に存在する、肌の質感を決定づける重要なタンパク質です。
- コラーゲン
真皮の約70%を占める主成分です。網目状に張り巡らされることで、肌全体の構造を内側からしっかりと支え、肌にハリと強度を与えています。 - エラスチン
そのコラーゲン線維同士を結びつけるように存在し、肌にしなやかな弾力を与えています。皮膚が押されたり、表情の変化で伸びたりした後に、元の形にきちんと戻ることができるのは、このエラスチンの働きによるものです。
この二つの成分が十分にあることで、肌はハリと弾力を保つことができます。
しかし、加齢や最大の外的要因である紫外線(光老化)によってこれらが減少・変性すると、肌は土台からゆるみ、毛穴が重力に引っぱられて涙型に伸びたような毛穴が出現します。
対策:コラーゲンとエラスチンを守り、育む
失われたコラーゲンをセルフケアだけで劇的に増やすのは困難ですが、日々の紫外線対策を徹底し、抗酸化作用のある食事やコラーゲン産生をサポートする成分(レチノールなど)を取り入れることで、減少のスピードを緩めることは可能です。
そして、たるみ毛穴の根本改善には、肌の内部に直接働きかけ、コラーゲンの生成を強力に促進する美容医療が非常に効果的です。
- 肌育/水光注射
ヒアルロン酸やアミノ酸など、コラーゲン生成の土台となる有効成分を直接肌の浅い層に注入し、肌全体のハリや潤いを底上げします。 - マイクロニードルRF(ポテンツァ、ブレッシングなど)
極細針による創傷治癒効果と、高周波(RF)の熱エネルギーを組み合わせ、強力にコラーゲン増生を促す治療です。たるみ毛穴だけでなく、ニキビ跡の改善にも効果が期待できます。 - 線維芽細胞移植
ご自身のコラーゲン産生細胞(線維芽細胞)を一度採取・培養し、再び肌に戻す再生医療です。肌の働きを根本から若返らせることが期待できる、最先端の治療法です。
水分
肌の美しさを語る上で、最も基本的かつ重要な要素が「水分」です。
肌が十分に潤っているかどうかは、毛穴の目立ち方に直接的な影響を与えます。
肌の水分が不足すると、主に2つのメカニズムで毛穴が目立つようになります。
- キメの乱れによる「乾燥毛穴」
乾燥によって肌表面の角質層がしぼむと、キメが乱れて凹凸ができ、毛穴の影が目立ちやすくなります。 - 皮脂の過剰分泌による「インナードライ毛穴」
肌は乾燥を感知すると、自らを守るために皮脂を過剰に分泌します。この過剰な皮脂が、毛穴の開きや新たな角栓の原因となってしまうのです。
対策:正しい保湿で肌の潤いを守る
日々のセルフケアでは、化粧水で水分を与えた後、必ず乳液やクリームなどの油分でフタをして水分の蒸発を防ぐことが基本です。セラミドやヒアルロン酸といった、肌の水分を抱え込む働きのある保湿成分が配合されたスキンケア製品を選ぶと、より効果的です。
しかし、肌の保水力そのものを根本から高めるには、専門的な治療が有効です。
- 肌育注射(ボライトXCなど)
持続性の高いヒアルロン酸製剤を直接皮膚に注入する治療です。肌自体の保水力を根本から高め、内側からみずみずしい潤いとハリをもたらします。 - 線維芽細胞移植
ご自身の細胞(線維芽細胞)を移植することで、ヒアルロン酸やコラーゲンを生み出す肌本来の力を活性化させます。これにより、肌全体の水分保持能力が向上し、乾燥しにくい健やかな肌へと導きます。
ターンオーバー
「少なくて困るもの」、その最後の要素は「正常なターンオーバー」です。
ターンオーバーとは、肌が一定の周期で新しく生まれ変わる新陳代謝の仕組みのこと。
肌の奥で生まれた新しい細胞が徐々に表面に押し上げられ、最後は古い角質となって自然に剥がれ落ちていきます。この健やかなリズムが保たれていることが、毛穴の目立たない美肌の必須条件です。
このターンオーバーのリズムが乱れると、本来剥がれ落ちるはずの古い角質が肌表面に溜まり続けてしまいます。
これが皮脂と混ざることで「角栓」を形成し、毛穴を詰まらせたり、肌のごわつきやくすみの原因になったりします。
対策:ターンオーバーのリズムを正常化する
ターンオーバーのリズムは、睡眠不足、ストレス、栄養バランスの乱れ、加齢など、様々な要因で簡単に乱れてしまいます。
日々のセルフケアでは、バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動といった生活習慣を整えることが、何よりも大切です。
しかし、乱れてしまったリズムを元に戻し、正常なサイクルを維持するためには、専門的な治療が非常に効果的です。
- レチノール(ビタミンA)配合のドクターズコスメ
レチノールには、肌のターンオーバーを促進し、正常なリズムに導く働きがあります。医療機関で処方される高濃度の製品を使用することで、ご自宅でのケアの質を格段に高めることができます。 - ケミカルピーリング
薬剤を用いて肌表面に溜まった古い角質を穏やかに取り除き、乱れたターンオーバーのサイクルを整える治療です。角栓の改善だけでなく、ニキビ予防にも効果的です。 - マイクロニードルRF(ブレッシング、ポテンツァなど)
極細の針で肌に微細な刺激を与えることで、肌の再生能力を高め、ターンオーバーを活性化させます。
まとめ 毛穴ケアはすなわち美肌ケア
「毛穴に関する誤解」から始まり、複雑に見える毛穴の悩みを
- 「多すぎて困るもの」を減らす(引き算のケア)
- 「少なくて困るもの」を増やす(足し算のケア)
という、非常にシンプルな視点で解説してきました。
角栓や過剰な皮脂、炎症をコントロールし、肌のハリを支えるコラーゲンや潤いを保つ水分を守り育む。そして、健やかな肌の生まれ変わりであるターンオーバーを正常に保つ。
これらのアプローチは、私たちが理想とする「キメが細かく、なめらかで、ハリと潤いに満ちた美しい肌」を目指すための基本的なスキンケアと、全く同じなのです。
つまり、毛穴ケアとは、毛穴という「点」だけを追いかけるものではなく、肌全体のコンディションを高める「美肌ケア」そのものだと言えます。
このブログが、皆さまがご自身の肌と改めて向き合い、正しいケアへの一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
もし、日々のセルフケアだけでは改善が難しいと感じたり、何から始めれば良いか分からなくなったりした時は、一人で悩まずに、ぜひ私たち専門家にご相談ください。
当院では、一人ひとりのお肌の状態を診察し、その根本原因から解決するための最適な治療プランをご提案いたします。
JSKINクリニック医師 牧野潤

慶應義塾大学医学部卒業、形成外科学会認定専門医
現在はJSKINクリニック代表医師、および慶應義塾大学医学部 形成外科 助教(慶應病院美容外来担当医)を務める。
所属:日本形成外科学会、日本再生医療学会、日本美容外科学会(JSAPS)、日本レーザー医学会
発表:日本形成外科学会学術集会(シンポジスト、口頭演者)、日本美容外科学会(JSAPS)(口頭演者)、韓国形成外科学会(口頭演者)
メディア: ホンマでっか!?TV(フジテレビ)、婦人画報、雑誌ゲーテ/GOETHE、MXテレビ、その他webメディアでの監修多数
JSKINクリニック東京銀座
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