60代男性 眼瞼下垂 — 緑内障の目薬で、片方のまぶたが下がっていた
緑内障の目薬で、片方のまぶたが下がっていた眼瞼下垂


| 施術 | (左のみ)挙筋腱膜前転術+上まぶたの皮膚のたるみ切除 |
|---|---|
| 麻酔 | 局所麻酔(日帰り手術) |
| 費用 | 保険適用3割負担で5万円程度が目安 |
| ダウンタイム | 内出血・腫れ 1〜2週間程度 |
| 通院 | 抜糸(術後1週間)/経過診察 2回(術後2週間・術後2ヶ月) |
01ご相談内容
眼科の先生からのご紹介で来院された、60代の男性です。
左目は緑内障で下方の視野が欠けており、そこに上まぶたの下がりが加わったことで、見えにくさが強くなっていました。車の運転を含め、日常生活に支障が出ている状態でした。
02診断・見立て
担当医:牧野 潤(形成外科専門医)
診察の結果、左の腱膜性眼瞼下垂と診断しました。まぶたを持ち上げる筋肉から伸びる腱膜が、まぶたの土台である瞼板からゆるんで外れかけている状態です。筋肉そのものの力は保たれているため、腱膜を掛け直せば開きは戻ります。
この方で見逃せないのは、下がった原因が加齢だけではないことです。緑内障の治療に使われるプロスタグランジン関連薬の点眼を長く続けると、まぶたが下がる、上まぶたがくぼむ、目のまわりの脂肪が痩せる、といった変化が起こることが知られています。ご紹介いただいた眼科の先生からも、点眼の影響の可能性をご指摘いただいていました。
この方に起きていた変化は、まぶたの下がりだけではありませんでした。目のまわりの脂肪が減ったことで、左の上まぶたにくぼみが生じていました。右と見比べると、左だけ上まぶたが落ちくぼんでいるのが分かります。「目が開きにくい」という見え方には、この上まぶたのくぼみも重なっていました。
点眼している側にだけ起こるため、片目だけが下がるという形になります。この方も、点眼していた左だけが下がっていました。そしてこの方の場合、その左目こそが緑内障で視野の欠けている側でした。見えにくさが二重にかかっていたことになります。
03施術内容
- 術式 (左のみ)挙筋腱膜前転術+上まぶたの皮膚のたるみ切除
- 麻酔 局所麻酔(日帰り手術)
- 費用区分 保険適用
ゆるんだ腱膜を瞼板に掛け直し、3点で固定してまぶたの開きを作りました。あわせて、上まぶたの皮膚のたるみも切除しています。設計では、二重の線の高さを4mm(皮膚を軽く引いた状態で5mm)、皮膚の切除幅を4〜5mmとしました。
たるみが残っていると、腱膜を掛け直しても、かぶさった皮膚のぶんだけ開きにくさが残ります。そのため、目の開きやすさを優先して、皮膚も一定量を切除しました。ただし片目だけの手術では、取りすぎると今度は左右の差がかえって強く出ます。上まぶたの厚みや二重の見え方が、左右で変わってしまうためです。開きやすさと左右のバランス、その両方が成り立つ量を探ることになります。
またこの手術では、眼窩隔膜という膜を開けて奥まで操作することがありますが、今回は開けずに温存しています。必要以上に触らないことで、腫れを抑える狙いです。
04経過・ダウンタイム




- 1週間後(抜糸) 目のまわりにほんのり黄色っぽい内出血の跡が残りますが、大きく目立つほどではありません。一方でこの時点では腫れの影響で二重の幅がまだ広めに見え、左右差が目立つ状態でした
- 2週間後 内出血はほぼ消失。ご本人からも「日常生活で何も感じることなく過ごせている」とのお話がありました。腫れも引き、二重の幅が落ち着いてきています
- 2ヶ月後 わずかに残っていた腫れがさらに落ち着きました。ご本人からは「どちらを手術したのか分からなくなった」とのお話がありました。合併症などのトラブルもなく、経過のフォローはここで終了としています
一般的には、腫れや内出血は1〜2週間程度とご説明しています。この方は1週間の時点でほとんど気にならない状態でしたので、経過としては早いほうでした。腫れや内出血の出かたには個人差があります。
05結果・ポイント



目を閉じたときの写真です。切開は二重のラインに沿って行うため、目を開けているときは線の中に隠れます。閉じたときも、抜糸の時点ですでに赤みは大きく目立たず、時間の経過とともにさらに分かりにくくなっていきます。
左まぶたの開きが改善し、右との差がほぼなくなりました。あわせて、目の開きが改善したことで上まぶたのくぼみ感もほぼ緩和し、左右が対称に近づいています。まぶたを持ち上げる力が戻ると、落ちくぼんで見えていた部分も一緒に持ち上がるためです。なお、右目にはもともと眼瞼下垂はなく、ご本人も困っておられませんでした。ただし右にも皮膚のたるみはあるため、右も二重のラインから少し皮膚を切除すれば、左右はさらに揃うと考えられます。その旨はお伝えしましたが、ご本人は現状に十分ご満足されており、右への介入は行わないという結論になりました。
片目だけの手術は、「下がっているほうを上げる」だけでは終わりません。上げたあとに、反対側とどう釣り合うかまで含めて設計する必要があります。どこまで手を入れるかは、左右の差の大きさと、ご本人がそれをどう感じているかの両方で決まります。
06費用とリスク
挙筋腱膜前転術(左・保険適用)の費用
保険適用の手術です。3割負担で5万円程度が目安となります。診察料・検査・処方などにより前後します。まぶたの下がりによって視野が妨げられているなど、機能的な障害が認められる場合に保険適用となります。見た目の改善のみを目的とする場合は自費診療となります。
主なリスク・副作用
内出血/腫れ/左右差/後戻り(時間の経過でまぶたの開きがやや戻ること)/傷あと/一時的にまぶたが閉じにくくなること(兎眼)/目の乾き/感染/再手術が必要となる可能性 など。腫れや内出血の程度、経過には個人差があります。気になる症状があった場合は、経過観察の予約を待たずにご連絡ください。
日本形成外科学会認定 形成外科専門医/日本美容外科学会(JSAPS) 正会員

