眼瞼下垂(挙筋前転法)について慶應形成外科専門医が解説します
眼瞼下垂とは
何らかの理由により目を開けるちから(挙筋機能)が弱まってしまうと、以前より目が開けにくくなります。
なんとなくまぶたが重く感じるだけでなく、もともとの目つきの印象が変わったり、二重の幅が狭くなったりすることがあります。
さらに眼瞼下垂が進み、無意識に眉毛をぐっと上にあげることで目を見開くようになっている方も多くいらっしゃいます。
眼瞼下垂の症状
眼瞼下垂が徐々に進行してくると、以下のような自覚症状につながることがあります。その原因や状態によって、その症状は多岐にわたります。
- 目を開けるために眉毛があがるため、おでこに横シワが刻まれていく
- おでこに力が入るため、夕方になると頭痛や肩こりに悩まされる
- なんとなく眠たそうなまぶたの印象になる
- 上まぶたのくぼみが目立ち、老けた印象につながる
- 元々より二重の幅が狭くなってくる
まぶたが下がってくる主な原因
眼瞼下垂の原因には様々なものがありますが、特に多い要因としては以下のようなものがあります。
まぶたをあげる筋肉(眼瞼挙筋)の機能が低下している
上まぶたの睫毛が生えているあたりの部分には、皮膚の下にまな板のような軟骨組織(「瞼板」)があります。ここにくっついている筋肉(「上眼瞼挙筋」)が、まぶたを開けようとするときに機能します。
この「瞼板」と「上眼瞼挙筋」が接続している部分は、じん帯(「腱膜」)のようになっています。
たとえ目を開けようと筋肉が頑張っていても、それをまぶたに伝えるじん帯(腱膜)がたるんでしまうと、結果的に筋肉の頑張りがまぶたに伝わらず、結果的にまぶたが上げにくい(眼瞼下垂)、ということになってしまいます。
このじん帯のたるみ自体は、加齢の影響、コンタクトの長期使用などが影響しているといわれています。
上まぶたの皮膚のたるみが強くなっている
上で説明したじん帯(腱膜)のたるみ以外にも、上まぶたの皮膚自体のたるみが強くなっている場合もあります。
皮膚のたるみが強いと、まぶたの上におもりが乗っかっているような状態になります。するとまぶたを開ける筋肉にとっても負担となってしまい、結果的に目があけにくいと感じやすくなります。
場合によってはたるんだ皮膚の被さりにより、二重の幅が狭く見えたり、厚ぼったいまぶたの印象につながることがあります。
その他の理由
頻度は一般的には低いですが、鑑別すべき眼瞼下垂の原因として以下のようなものも挙げられます。
生まれつき(先天性)の眼瞼下垂・・・ 生まれつき眼瞼挙筋やミュラー筋の機能が著しく低下している場合
けがによる(外傷性)眼瞼下垂・・・ 眼瞼挙筋、挙筋腱膜、動眼神経などが強く損傷された場合
他疾患による眼瞼下垂・・・ 重症筋無力症、ホルネル症候群などの場合
挙筋前転術とは
筋肉(眼瞼挙筋)の頑張りがしっかりとまぶたに伝わるようにする手術です。
すなわち、たるんでしまったじん帯(腱膜)を縫い縮めることで、筋肉と瞼板が密着するようにして、楽に目を開けられるようになったり、よりぱっちりした目の印象をつくることができます。
腱膜が伸びて後退してしまった眼瞼挙筋を、本来の位置(もっと前)に移動させてあげるので、「挙筋前転術」という表現がされます。
(たるみを縫い縮めるので、挙筋短縮術、という表現をする場合もあります)
もともと眼瞼下垂が進んでいない方に対しても、この手術でより目が大きくぱっちりする印象となるため、切開二重術と併用することがあります。
(デカ目手術、パッチリ目手術、などと特別に表現されるようなこともあるようですが、原理としては同様です)
実際の手術では、以下のようなポイントを考慮してデザインをおこない、適切な手技をおこなうことが必要になります。
- 上まぶたの皮膚の状態(たるみの程度、皮膚の状態)
- まぶたの皮下組織(上眼瞼挙筋、眼輪筋、眼窩脂肪など)の状態
- 元々の二重のライン、眉のかたち など
そのため安易に画一的な手術治療を受けてしまうと、本来行うべき治療とは別になってしまったり、目指したいものとは異なる結果となってしまうことがあるため注意が必要です。
こんな方におすすめ
実際にはご自身のまぶたの状態を確認し、適切なアセスメントが必要になりますが、例として以下のような方は眉下切開術をおすすめしやすいと言えます。
- まぶたがあけにくく、無意識に眉毛を上がりやすい方
- 上まぶたのたるみが被さって、元々の二重が狭くなっている方
- まぶたの重さによって、肩こりや頭痛にお悩みの方
- 目をあけにくいだけでなく、まぶたの厚ぼったさも気になる
※まぶたを開くための筋肉(上眼瞼挙筋)自体の改善が望ましい場合は、別方法での手術(挙筋前転法)による手術の適応となる場合があります。
当院での挙筋前転術の特徴
慶應義塾大学所属の形成外科専門医が手術を担当します
まぶた(眼瞼)に関連する手術は、「形成外科」という診療科の専門領域になります。眼瞼下垂の診断となる方については保険適応となり、美容目的の場合は自費治療の対象となります。
自費治療の場合は「美容外科」的な治療となりますが、この美容外科というのも、本来は形成外科として研鑽を積んだ医師のさらなる専門分野のひとつとして位置づけられています。
つまり保険適応の有無にかかわらず、まぶた(眼瞼)を扱う手術は形成外科的な技術やコンセプトが基礎となっているため、当院では形成外科専門医が手術を担当する方針としております。
また当院は慶應義塾大学病院・慶應義塾大学医学部形成外科に公認されている連携機関であり、同医局に現役で所属している医師で手術チーム体制をとっております。(慶應形成外科医局ページ)
手術前後のフォロー体制も大切にしています
先述の通り、それぞれの方のまぶたの状態を診察したうえで、適切な治療方針を立てることがまず重要になります。
特定の手術方法のみを費用をかけて宣伝広告したりモニター募集をしている場合、どうしても不必要にオーバーな手術を強いられたり、適応とは少しずれた治療を受けなければならない可能性もあり、注意が必要です。
当院では医師診察・カウンセリングの上で治療を受けられるかをよく検討いただき、治療適応がありかつ治療をご希望される場合は、別途手術日程の設定に進んでいただいております。(原則、カウンセリング当日の手術をおすすめすることはありません。)
また、術後は抜糸の処置が必要になります。(手術後およそ1週間後頃)改めてアフターケアの方法や、普段の生活でのお過ごし方についてご説明し、ご質問などあれば医師がおこたえします。
抜糸のタイミングではまた若干の腫れや内出血が落ち着ききっていないこともあり、その後1~2回程度定期健診におこしいただくことをおすすめしています。(ご都合に合わせて1、3、6か月後頃など)
万が一のトラブルの際にも、適切にフォローさせていただきます。
挙筋前転術の適応判断を含め、総合的なご提案が可能です
眉下切開術は、上まぶたのたるみが強い方や、ダウンタイムをおさえた眼瞼下垂症手術として優れた方法です。一方でその治療適応の判断や、それ以外の方法はないか、といった視点でご提案できる体制も重要であると考えています。
その他の手術治療、デバイス治療(ハイフ)、レーザー治療、フィラー治療(ヒアルロン酸、ボトックス)など、様々な選択肢の中から、総合的におすすめできるなかで、治療方針を相談いただくことが可能です。
治療の流れ
医師診察・カウンセリング
問診票を記入いただいた後、医師が診察をおこないます。
現在お困りのこと、気になっていることや、今後のこうなったらうれしい、といったご希望についてもお伺いします。
そのうえでまぶたの状態を診察し、手術の適応かどうか、治療にあたっては保険適応となるかどうかを判断をいたします。
挙筋前転術、および必要に応じて他治療についても解説いたします。そのうえで治療を受けられるかどうかについて、ご検討いただきます。(当日に最終決定するよう強いることはございません。十分にご検討ください。)
最終的に治療を受けられることにされた場合は、別途担当者と手術日の調整をご相談いただきます。
手術当日
ご来院後、専用のパウダースペースにて洗顔をいただきます。当日、なにか聞き忘れたことや追加でお聞きになりたいことがあったら、お気軽にご質問ください。
医師が手術のデザインをおこない、安全に手術を行えるよう、お顔の消毒や器具のセッティングをおこないます。
万全の準備が整った段階で、手術を開始します。
最小限の痛みで手術を行えるよう、最初に部分麻酔を行います。はじめはちくっとしますが、麻酔が効いてからは手術中痛みなくお過ごしいただけます。手術自体は、60~90分程度で終了します。
手術が終わったら状態を確認いただき、軟膏を塗ります。(場合によりその上からガーゼを当てる場合があります。目は覆わないので、普通にご帰宅いただけます。)
眼鏡やサングラスなどをご持参いただくと、帰り道のカバーになるかもしれません。
手術後のアフターケア
手術後は、アフターケアで使っていただく軟膏や、手術後の痛みが気になる場合の鎮痛薬、念のための抗生物質のお薬をお渡しします。(保険適用の場合は処方箋をお出しします)
ご自宅にお帰りになる際は、付き添いの方にきていただくのもおすすめです。(当日ご自身での車や自転車の運転は控えてください)
次回診察までの過ごし方についても、改めてご説明します。
もし次回受診までにお困りごとやご質問があった際は、デジタル診察券からサポートチャットにつながりますので、そちらでご連絡をいただければ、適宜医師に確認しご返答が可能です。
抜糸
手術後からおよそ1週間程度で、抜糸の処置のためにご来院いただきます。
抜糸も丁寧におこなうことで、きずあとがより早く落ち着くようになります。
抜糸の時点ではまだきずあとの赤みが強く、若干腫れや内出血が残っていることがありますが、目の開けやすさについては既に実感できていることが多いです。
経過診察
抜糸後は、きずあとの状態に合わせて経過診察をご案内しております。(およそ1~3か月後頃)
お仕事や生活のご都合に合わせて、日時について設定いただくことが可能です。
施術の概要
所要時間
手術自体はおよそ60~90分
ダウンタイム
手術後の腫れや内出血は翌日が強く、1(~2)週間程度かけて徐々に落ち着いていきます。
手術後、抜糸までの約1週間の間は、縫合の糸がついているためやや目立ちやすいです。(糸自体は髪の毛よりも細い糸です)その間はきずにはお化粧などはしないことがおすすめです。抜糸後からはお化粧などをきずの部分も含めてして構いません。
きずの赤みは1~3か月程度は比較的強い時期が続きます。3~6か月程度たってくるとだいぶ落ち着き、さらに期間をかけてより目立ちにくくなっていきます。
治療後の生活
- 洗顔・・・ 手術後24時間経って以降から可(きず自体も濡らしてやさしく洗顔して大丈夫です)
- お化粧・・・ きずの部分以外であれば当日より可、きずの部分は抜糸後からがおすすめです
- 食事・・・ 当日から可
- お酒・・・ 手術後24時間経って以降から、少量なら可(深酒する場合は抜糸が済んでからにしてください)
- 運動・・・ 手術後24時間経って以降から、軽くなら可(激しい運動は抜糸が済んでからにしてください)
副作用・リスク
・基本的に一過性には起こるもの:手術後の内出血や腫れ(数日~1,2週間)、軽い痛み(当日~数日)
・まれでが起こりうるもの:縫合不全、創部感染、肥厚性瘢痕、左右非対称、上眼瞼の引き連れ など
(万が一のトラブルの際には適切にフォローさせていただきます。)
ご料金
形成外科専門医によるカウンセリング
美容手術(自費治療)の場合・・初診料2,200円、再診料1,650円
(眼瞼下垂が認められる場合は保険適用になります)
美容手術(自費治療)の場合
眼瞼下垂症手術: 片側190,000円(税込)、両側290,000円(税込)
(両側眼窩脂肪切除の併用 +55,000円)
※アフターケア専用軟膏、内服薬(抗生物質及び痛み止め2日分)、初回経過診察時の医師診察料(抜糸込み)も上記料金に含まれています。原則上記料金以外はかかりませんのでご安心ください。
眼瞼下垂に対する手術の場合
眼瞼下垂の治療目的である場合は保険適用となります。
両側で約45,000円(3割負担の場合)
JSKINクリニック ー”あなたに応える美容医療”
【2021年11月の開院より、のべ15,000名以上の方々にご来院をいただいております。(2024年4月時点)】
【慶應義塾大学病院及び聖路加国際病院より、医療連携クリニックとして認定されています】
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